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2006年2月15日 (水)

スピードスケート界に新常識?

トリノオリンピック「スピードスケート」の500mが、前日の男子に続いて女子も終了した。共に惜しい結果で、岡崎朋美選手の4位が最高だった。

それにしても、日本選手が滑走する直前のレースで、選手が転倒したために整氷作業が入るというシーンが目についた。次に滑る選手は、氷上で10分近くも待たされていた。それでも、直後に滑った日本人選手の精神的動揺は無かった、しっかりとメンタルマネジメントができていたように見えた。

スピードスケート界にも、メンタルトレーニングを適切に導入している選手は多いことと思う。スピードスケート界でメンタルトレーニング(イメージトレーニング)が行われているのをマスコミが初めて報道したのが、黒岩彰選手のものだったと思う。

1983年の世界スプリント選手権で総合優勝を飾っていた黒岩選手は、翌年のサラエボオリンピックでの金メダル獲得を当然のように期待されていた。しかし、天候の影響で開始時間が大幅にずれたことと、マスコミ対応のまずさからか、500mが10位、1000mが9位という惨敗となった。精神面が対応しきれなかったからだ。

この反省から、黒岩選手はメンタルトレーニングにも積極的に取り組み、3年後の1987年世界スプリント選手権で再び総合優勝、そして、1988年のカルガリーオリンピックでは500mで銅メダルを獲得するという、精神面でも大きな飛躍を遂げた。

このとき、メンタルトレーニングの前提条件である「心身のリラクゼーション」をコントロールする能力を開発するためのバイオフィードバックトレーニングに使われたのがGSRだ。進化したGSRシステムを以下のURLで紹介している。
http://www.selsyne.com/aim/products/healthy/


話しが脱線してしまった。
今回、テレビ中継を観ていて感じたことがある。スケートシューズの紐をきつく締めているために、アクシデントで10分近くも余分に待たされる選手は、足が痺れてしまって不利であること。そして、注目したいのは次だ。

この種目で見事金メダルを獲得したアメリカのジョーイ・チークは、
整氷作業が始まったとき、出番に余裕があったのでシューズの紐を解いて待機した。そして、この日の全レース中で最高のタイムをたたきだした。フィニッシュしたときのチークの笑顔は、「信じられない・・・」といった表情の喜びだったように私の目には映った。

解説の堀井学氏によると、長野オリンピックで優勝したときの清水宏保選手も、滑走前のアクシデントで紐を一度結び直しているそうだ。

これって偶然だろうか? いや、身体的有意が働いている可能性が大きいと思う。陸上の400m走や今回の500mの滑走は、筋肉組織に蓄えられているエネルギーを使い切る過酷な競技だ。そう、レース中にエネルギーの補給はされない。だから、出走前にどれだけのエネルギーを筋肉に蓄えているかが重要になる。筋肉内にエネルギーが無くなったら、いくら根性を出しても身体はもう動かない。

シューズの紐をきつく結ぶことで足は鬱血する。その後、紐を解くと静脈が解放されて血液がどっと流れ込む。反動反射の働きで、普段よりも多くの血液が筋肉組織に充填される。その後、紐を締め直して出走することにより、普段よりもエネルギーを多く使えるのである。

今後、スピードスケートや陸上の400m走などのスタート直前ルーチンワークに、このステップが導入されるんじゃないかと思う。医療や人間工学による緻密な検証に期待したい。

それにしても、競技レーン内側の青い練習レーンは何とかならないのかな。一番緊張するスタートの瞬間に、横をだらだらと?滑っていられるのはどうも気が散る。選手達は集中しているから気にならないのかもしれないが。今回、世界最高タイムを持ち優勝候補だった加藤条治選手は、練習レーンで他国のコーチとぶつかって、ブレードを傷めたまま修理もできずにレースに臨まざるを得なかったそうだ。是非一考を。

セルシネ・エイム研究所 和田知浩
http://www.selsyne.com/

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