脳波測定器・・・「エビデンス」のための「バリデーション」。
今月18日(月)に放送されたNHKの「クローズアップ現代」が面白かった。タイトルは、「脳波が暮らしを変える」だ。
脳波に関する最近のトピックスを、30分番組で見事に網羅していた。
番組のHPには、以下のようなコメントが掲載されている。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2010/1001-4.html
脳が活動したときに発する脳波を利用した機器が、いま急速に日常生活に浸透し始めている。米国では小さな脳波センサーを額につけ、念じることでボールを操る玩具が発売されて大ヒット。脳の集中度合いを反映させて遊ぶ新感覚がうけて、品薄の状態が続いている。おもちゃだけでなくスイッチ操作を脳波で行う家電製品の開発も進んでいる。更に脳波から人の心の動きも調べる動きも活発化。どんな商品が消費者の心を捉え購入意欲を高めるのか、脳波などで分析を行うビジネスが誕生しているのだ。一方で、脳波の利用は、人の心や行動に影響を与え、脳そのものを変化させようとしている。ある種の理想の脳を作るためのトレーニングも開始されている。番組では、私たちの生活に浸透し始めた脳波が、私たちの社会をどう変え、人の脳や行動にどんな影響を与えていくのか、その最前線を見る。
・・・引用終わり。
最も「良かった」というか、「嬉しかった」というか、「好感を持てた」のは、スタジオゲストとして出演された川人光男氏(国際電気通信基礎技術研究所)のコメントだった。
川人氏の輝かしい業績はネット検索すれば分かることなので省略する。
川人氏は、「脳波の研究者と利用者そして一般の人たち、この三者間の情報交換が今後益々重要だと思う」というようなことをおっしゃった。私も大きくうなずいた。
私は「脳波研究家」の肩書きでマスコミに出ることがあるが、実際の活動は「脳波の利用者」の方に近い。メンタルトレーニングを効果的に行うために“脳波”を利用しているのだ。
「研究者」「利用者」「一般の人」では、脳波に関する認識に大きな溝があるような気がしている。特にまず「研究者」と「利用者」の情報交換が急務だと思う。それぞれが、それぞれにない情報を持っている。
この番組の放送中から、弊社のHPとブログへのアクセス数が急激に伸びて、当日(18日)と一昨日(19日)は通常の2~3倍をカウントしている。
アメリカに住んでおられたご夫婦が最近帰国され、先日脳波測定器を購入して頂いた。そのご夫婦が一昨日来訪され、興味深いことを教えてくれた。
「アメリカには、脳波測定器はもう無いんですよ」と。
私は「えっ?」と思った。
脳波測定器がバイオフィードバック法に使えるとして「インスタント禅」がアメリカではやったのは、もう25年以上も前の話だ。IBMなどの大企業が社員教育に利用していると当時話題になった。
そして今でも上述のように、念じることでPC画面の映像やリアルの物体を動かすおもちゃがヒットしている。
バイオフィードバック法で得られるアルファ波と何十年も修行した座禅のアルファ波は、脳波は同じでも境地までも同じとは言えない。そういうこともあり、流行は一過性だった。
とはいうものの、アメリカでは脳波バイオフィードバック訓練に保険診療点数がつくと聞くし、おもちゃもヒットしている。
ところが、測定精度の信頼性を満たし、かつ一般の人でも購入できる価格帯の脳波測定器は無いのだそうだ。
クローズアップ現代で紹介されていた脳波のおもちゃで遊ぶ子供の様子を見ると、念じるときに息を止めるようにして顔も緊張させ、そのときにおもちゃが動き、子供がその緊張を緩めるとおもちゃも止まっていた。このことから、おもちゃは、脳波というよりも緊張による筋電ノイズを拾って反応しているように感じた。(間違っていたらすいません)
ノイズキャンセリング機能のないバイオフィードバック装置でアルファ波トレーニングをすると、間違った反射がトレーニング者に形成されてしまう。これは、笑い事では済まされない。
同じく一昨日来訪された脳波測定器メーカーの若菜氏が興味深い情報を教えてくれた。
最近、アメリカから脳波測定器に関する問い合わせが相次いでいるのだそうだ。理由は、ある業界の製品に、ユーザーの精神状態を把握する機能を付けることを義務化する法案が検討されているからとのこと。
やっぱり現在のアメリカには適当な脳波測定器が無いのか?
若菜氏がもう一つ嬉しい話しをしてくれた。
「本格的なバリデーションに取り組みます」と。
バリデーションとは、「科学的に検証すること。妥当性確認」という意味だそうだ。
要は、製品やその製造過程における品質チェック態勢をしっかり整えますよ、ということらしい。
思わず、「遅いよー」と突っ込みたくなった。今までに私が幾度となく訴えてきたことだ。でも、他のメーカーも含めて、「医療用ではありませんからねー」が常套句だった。
こんな状況だったから、お客様から詳しい説明を求められても、ドキュメント(記録・文書)自体が存在しないから明快に答えることができなかった。
でも、数万円から1万円を切る脳波計でそれなりの測定ができるようになった今、差別化のために重い腰を上げ始めたのだろう。大歓迎である。大きな労力を要すると思うが、ぜひ頑張って実現して欲しい。
「自社製品のリラクセーション効果を実証するために脳波を測定したい」という要望が最近特に増えてきている。
こんなエビデンス(科学的根拠に基づいたもの)化をしっかりとサポートするためにも、脳波測定器のバリデーションもしっかりと構築してもらえることを期待している。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
http://www.selsyne.com/aim/
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