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2010年8月16日 (月)

ヨーガマスター伊藤玲子氏のチャンネル脳波は「ファストアルファ波」?

5月に開催された「メンタルヘルスケア・ジャパン」で行われたヨーガ体験会に参加した。1時間のセミナーで、ワーク時間は僅か20分程度だった。

このちょっとした体験が効果覿面だった。自分の声が腹部と胸部を心地よく振動させながら楽に発せられる。十分に弛緩した身体が低くコロコロとした響きを作っていた。

精神も非常に落ち着き、この状態ならどんなに緊張する場面でも、平常心(ビョウジョウシン)で最高のパフォーマンスを発揮できると確信できた。

平常心については、セルシネのeラーニング「コルパーに成る」のLesson4.「平常不動心という心構え」で解説している。

また、激しい運動をしたわけでもないのに、帰宅してから取った夕食時には、胃がグーグーと鳴って「早く早くー」と喜んでいるようだった。

こんな風なベストコンディションを、こんなに短時間のしかも簡単な取り組みで実現できるとは・・・。まさに「目から鱗が落ちる」の体験だった。

20分間の誘導で行ったヨーガのワークはどれも単純で、何の変哲もなかった。それなのになぜこんなに効果があるんだろう。表面的には分からない手順があるのだろうか? それとも、誘導してくれたインストラクターの能力が為す業だったのだろうか?

そんな折、脳波測定器をレンタル提供したテレビ番組制作会社から、ヨーガインストラクターを紹介して欲しいとの依頼があった。面識はなかったが、この先生は本物だと思うからと、このときのヨーガインストラクターを提案した。そして無事、オンエアされた。

この件を切っ掛けに、ファインブレイン研究会としてヨーガ脳波の共同研究を申し入れた。すると、快くお受け頂くことができた。

第1回の研究を今月12日(木)に、神奈川スポーツセンターの研修室で行った。

共同研究してくださるのは、人材育成の教育・研修を提供されている株式会社アイアンドオンだ。

当日は、同社社長の伊藤宏之氏と、奥様で同社取締役の伊藤玲子インストラクター、ファインブレイン研究会を後援してくださっているフューテックエレクトロニクス社の若菜毅敏氏、そして私の計4人が会した。

設営を済ませた後、本研究の被験者であり、私にあの不思議な体験を誘導してくださった玲子インストラクターへの取材からスタートした。

玲子氏は、もともとはジャズダンス(ジャザサイズ)とエアロビクスのインストラクターをされていたそうだ。その流れで、ヨーガを取り入れるようになり、2007年にはヨーガインストラクターとしてインド中央政府から公認されている。現在は、大手民間スポーツクラブや公共スポーツ施設において、ヨーガやパワーヨーガ、そしてピラティスを週に18クラス担当されている。

簡単な取材を終えてから、いよいよ脳波測定に移り、計14回の測定を行った。

まずは、玲子氏の基準脳波(閉眼安静)を測定してみた。

このグラフは、脳波の原波形を0.5Hz刻みで分解して横軸に並べ、それぞれの周波数のボルテージを縦軸に表すスペクトルグラフである。上段の大きなグラフが測定全体の平均で、中段と下段の小さなグラフは、10秒ずつの平均グラフである。

Itoreiko20100812a1

ご覧のように、12.5Hzの帯域だけが約20μVと突出し、他の周波数は殆ど出ていない。1分間の測定でこの脳波パターンに大きな変化は見られなかった。

一点の周波数だけが突出して、その上そのパターンがあまり変化しないとなると、どうしても何らかのノイズの影響を疑わざるを得ない。ところが、この周波数の環境的ノイズは見当たらなかった。

改めて玲子氏の基準脳波を3回測ったが、1回目と大差ない結果となった。ただ、漠然と目を閉じているのは難しいようで、ますます集中力が高まってきていることが12.5Hzの増加傾向でうかがい知ることができた。

次に測定したのは、簡単な四則計算を行っているときの脳波だ。

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12.5Hzが平均30μVまで高まった。8.5Hzの周辺も頭をもたげている。2回測定したが同じような結果だった。

どうやら玲子氏は、これまでのヨーガ行によって、12.5Hzの脳波チャンネルを利用して自身の状態をコントロールするという術を体得されている可能性が出てきた。

この日最も強い12.5Hzが観察されたのは、8回目の測定時だった。トータル8分40秒間の行で、腹式呼吸から始まり、次に胸式呼吸、最後に片鼻呼吸に入ったとき、10秒平均で45μVにまで達した。そして、7分41秒で瞬間ボルテージが測定限度の50μVを超えてしまった。

前頭葉前額部のアルファ波が50μVを超えるのは、非常に希なことである。

Itoreiko20100812a8

7分41秒に12.5Hzが50μVを超えた瞬間のグラフは、弊社ウェブサイト「脳波研究」のリサーチNo.3に掲載している。

玲子氏にリクエストしたくなった。「12.5Hzが強く出ていますが、この周波数を10Hzや7.5Hzの方に下げてみてもらえませんか?」

脳波測定が初めての玲子氏には酷な注文だったが、達人級の脳波を目の当たりにしてリクエストせずにはおられなかった。

「やってみましょう!」と、快くチャレンジしてくださった。片手を顔の前に置き、右鼻孔を塞いで左鼻孔だけで呼吸する行だ。そのときの脳波がこれである。

Itoreiko20100812a11

なんと、周波数が下がるのではなく、12.5Hzのボルテージが下がった。平均で15μVである。玲子氏の基準脳波よりも低いのだ。

不思議に思っていると、「これはテンションを下げる行なんです。左鼻の呼吸は、副交感神経を優位にするんです」と玲子氏が教えてくださった。この結果に一同大いに沸いて喜んだ。

試しに、右鼻孔の呼吸を行っていただくと、確かにまた12.5Hzのボルテージが上がった。

この片鼻呼吸法をしているときの脳波を分布グラフで紹介しよう。

Itoreiko20100812a11bunpu

上の分布グラフが左鼻孔の呼吸をしているときの脳波だ。そして下の分布グラフが右鼻孔の呼吸をしているときだ。一目瞭然である。

Itoreiko20100812a12bunpu

玲子氏は、12.5Hz(ファストアルファ波)をメインの脳波チャンネルにして、ご自身の統制を実現しておられるようだ。

今回の全14回の測定は、全て右前頭葉前額部(Fp2)を測っている。ただ、このように鼻呼吸の左右で違いが出てくると、左脳の脳波も知りたい。

残念ながらここで時間切れとなったが、今後は、脳波の左右差確認や周波数を下げる行を探ってみたい。

なお、脳波の周波数別特徴は、弊社ウェブサイト「ノウハダス」の脳波の種類コーナーに掲載している。

Itoreiko20100812a0

それにしても、瑜伽氏といい、今回の玲子氏といい、ヨーガマスターの笑顔は本当に素敵である。満面の笑みが心底からストレートに表れる。「アルファ波が高いボルテージで出ているときは潜在意識の扉が開いている」というのが、こんなところからもよく分かる。

セルシネ・エイム研究所 和田知浩
http://www.selsyne.com/aim/

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