気律脳波研究のリハーサル。
23日前に富樫昭夫先生と初めてお会いして以降、立ち上げながら、考えながら、作りながら、感じながら、調べながら、まとめながら、壊しながら、色んなことが化学反応を連鎖的に起こしながら展開している。
気律の作用を脳波で確かめるために、毎週月曜日に富樫ご夫妻と協同研究をスタートした。
来週からは、ボランティアの被験者(患者/能力開発・鍛練者)にお越し頂いて効果測定を行うが、今週は脳波測定器メーカーの若菜さんに被施術者役をお願いし、研究測定のリハーサルを行った。
このリハーサルを定点カメラで撮影した動画「『気律療法における施術者と被施術者の脳波共鳴研究』リハーサルの様子」を気律紹介ページに掲載した。
「“気”の巡りを治めて、自他の統制と癒しを促す技術」を“気律”と呼ぶこととしたが、果たしてそれを脳波で観察できるのか・・・。当日の測定結果の中から、いくつかの特徴的な脳波をピックアップして報告したい。
この日の研究は4時間半に及び、のべ19個の脳波データを収集し、測定の合間には率直な意見交換もした。
“気”がさっぱり分からない私からの質問は、まるで「自転車に乗る方法を言葉で説明してくれ」と言っているようなものだったと思う。
ただし、“気”が分からないとはいうものの、施術を受けた後の調子の良さは実感している。それが何なのか、誰でも努力次第で使えるようになるものなのか、脳波を手がかりに探求することがこの研究の目的である。
いつものように前置きが長くなってしまった・・・。それでは、測定結果をお見せしよう。
このグラフは、若菜さんがベッドに横たわって閉眼安静している1分間の脳波周波数スペクトルだ。縦軸のフルスケールは50μVである。若菜さんの脳波はこれまでにも何度か測定させてもらっているが、いつもだいたいこんなものである。
その後2回、富樫昭夫先生の施術を受ける若菜さんの脳波を、10分間と5分間に分けて測定した。それを観察していた富樫光恵先生が、「仙骨がいいのかもしれない」と指摘して下さった。
昭夫先生の施術動作を素人目では漫然と追ってしまいがちである。しかし、何をしているのか分かっている光恵先生には、施術と脳波の相関が明らかだったのだ。
富樫ご夫妻の解説によると、仙骨と脳髄(いわゆる脳)は直結しているのだそうだ。
仙骨から気ネルギー(気のエネルギー)を調整すると効果的なのかもしれない。これで、施術のポイントが一つ決まった。
全ての施術を受け終わった後、最初の測定と同じように若菜さんがベッドに横たわって閉眼安静の脳波を3分間測った結果がこのグラフである。
最初の30秒間はシータ波(青色の線)が2回強く出ている。入眠/まどろみ状態に出る脳波だ。やはり気持ち良かったようだ。しかし、さらに注目すべきは次の変化だ。十数秒毎に出る優勢脳波がシータ波からミッドアルファ波(緑色の線)に変わった。
これは、リラックスした状態で、なお且つ頭(思考)が聡明であることを示している。シータ波からそのまま眠りに陥らず、リラックスしながらもしっかりと覚醒しているのだ。
これらの優勢脳波は、若菜さんの呼吸と同調していることが容易に推察できた。後半は、呼吸のリズムからも解放されて、さらに連続的なミッドアルファ波が継続して出現した。
測定が終わって自身の脳波を確認した若菜さんの驚きと喜びは、動画にある通りだ。
各脳波(周波数)の特徴は、弊社脳波関連ポータルサイト「NOWHADAS」の「脳波の種類」コーナーに掲載している。
実験の途中、光恵先生が「気になっていることがあるから」と、私をベッドにうつ伏せにさせて、仙骨から気律して下さった。光恵先生と私の脳波共鳴の有無は詳細な分析が必要だが、一点、明かな特異脳波が観察された。それが、以下のグラフである。
5分間の脳波測定で、開始9秒のところで、非常に強いファストアルファ波が光恵先生から出ている。後で詳しく分析してみると、39.4μVであることが分かった。
これまでに様々な分野の達人脳波を測定してきた中で、私は、達人脳波と判定する基準を40μVと決めている。光恵先生の脳波は、それに後一歩のところまで迫ったのだ。
(周波数解析は、測定器の仕様や解析周波数の塊によってボルテージが変わるので、ここで述べた基準はあくまでも脳波測定器「FM-929」と脳波解析PCソフト「パルラックス・プロ」で測定した場合に適用されることをお断りしておく)
ファストアルファ波は、緊張集中の脳波である。“緊張”というと良いイメージで伝わらないかもしれないが、ベータ波の分散緊張とは全くの別ものである。
ファストアルファ波は、アスリートやパフォーマーがその秀でた能力を発揮しているときに強く出る脳波だ。
開始後9秒のところで光恵先生は何をしたのか? 再現性はあるのか? 今後の研究で探っていきたい。
さて、昭夫先生の脳波であるが、測定技師泣かせなのである。
動画でも話題に上っていることだが、施術中、昭夫先生の頭が揺れるのだ。この揺れは、脳波の低い周波数帯域(シータ波やデルタ波)にノイズとして影響してしまう。よって、強い脳波が観察されても、それが脳波なのかそれともノイズなのかの判定が難しいのである。
ヨーガの達人もそうだが、ある精神領域に達したとき、身体や目が振動し始めることがある。
私も、座禅がうまくできたときには腹部が7.5Hz付近で振動し始める。
振動というのは、能力を発揮したり、ある種の境地に達するときに避けられない現象なのである。
“脳波測定器は振動に弱い”ということを踏まえた上で、昭夫先生の脳波をご覧頂こう。なお、測定器には、ノイズ混入が疑われる際にはグラフ表示をキャンセルする機能が備えられているが、本研究ではこの機能を原則オフに設定している。宝の脳波を見逃さないためだ。
通常は、おでこの右側(Fp2)を測定しているが、今回は、その他、おでこの左側(Fp1)と、おでこの中心と頭頂葉を結んだ線の中間辺り(Fz)も測定してみた。脳部位の詳しい図解は、弊社「NOWHADAS」の「国際脳波学会が提唱する10-20法に基づく電極配置」に掲載している。
このグラフは、昭夫先生の閉眼安静時、Fz部位を測定したものである。これまでにお見せした全時間グラフではなく、60秒間の拡大グラフで紹介する。縦軸のフルスケールは50μVである。
ミッドアルファ波が優勢で、リラックスした一点集中状態であることが分かる。Fp1もFp2も概ね同じような脳波が観察されたが、このFzが幾分ミッドアルファ波のボルテージが高かった。
昭夫先生の施術中の脳波は次の通りである。
ミッドアルファ波が強いのは変わらないが、問題はこの青色の線である。青色は通常シータ波の5.0Hzに設定しているが、このグラフの青色線は3.0Hzのデルタ波に設定した。この周波数が劇的に強いボルテージを発するからだ。
20秒進んだところのデルタ波は50μVに迫る強さである。施術中、昭夫先生の身体は揺れている。だからこれをノイズと見るべきか、脳波と見るべきかが悩ましいところだ。
3.0Hzの最大値が出ている20秒目の原脳波はこの通りである。
横軸のフルスケールは2秒、縦軸のピークピーク値は200μV(-100μV~100μV)である。
綺麗な波になっており、ノイズが混入しているようには見えない。もしかすると、昭夫先生が施術を行われる際には、デルタ波が鍵を握っているのかもしれない。実際、被施術者(今回は若菜さん)のデルタ波が共鳴している節もある。
いずれにしても、さらなる検証が必要である。
科学は、多くの批判と質問によって磨き上げられる。
“気”の脳波研究はこれまでにも沢山行われてきているので、すでに知見をお持ちの方は是非ともご教授頂きたい。一般の方からのアイデアや意見も多いに歓迎である。
この研究で使用している脳波解析PCソフト「パルラックス・プロ」と「パルラックスF」の64ビット版を今日発売した。
脳波探検の同士が大勢出現してくれることも楽しみだ。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
http://www.selsyne.com/aim/
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