やはり女子アナは聡明なのか?。TBS田中みな実アナとフジテレビ松尾翠アナの脳波を測定して。
先月は、脳波測定関連で2つのテレビ番組からオファーを頂いた。TBSの「アカデミーナイト」とフジテレビの「めざましテレビ」である。
脳波関連ポータルサイト「NOWHADAS」のテレビで利用された番組を紹介するコーナー にもオンエアの数コマを掲載している。
オンエアは「めざましテレビ」が早かったが、ロケは「アカデミーナイト」の方が早かったので、「アカデミーナイト」から紹介しよう。
「アカデミーナイト」は、今年6月に公開される映画「リアル~完全なる首長竜の日~」 (監督:黒沢清、原作:乾緑郎「完全なる首長竜の日」宝島社刊、企画プロデュース:平野隆、脚本:黒沢清/田中幸子、音楽:羽岡佳、キャスト:佐藤健/綾瀬はるか/オダギリジョー/染谷将太/堀部圭亮/松重豊/小泉今日子/中谷美紀、配給:東宝、助成:文化芸術振興費補助金)を取り上げた回で、映画の内容に因んで脳波や感覚にまつわる様々な技術や商品が紹介された。
私の役割は、田中みな実アナの脳波を測定して、精神状態を評価するというものだった。
ロケでは様々な質問が田中みな実アナに浴びせられ、その時々の精神状態を私が評価していった。しかし、オンエアではこの部分が全てカットされていた。少々無理があったようである。
番組でも紹介された田中みな実アナの閉眼安静時の脳波は以下のグラフの通りである。
2分間の測定で、後半は100引く7の計算をしてもらった。
測定を始めて23秒辺りまではアーチファクト(動いたりすることで発生する人体的ノイズ)が目立つ。よって、23秒にマーカー(青色の縦両矢印線)を挿入し、そこから最後(2分)までの脳波を有効として評価した。
グラフの見方は、弊社ウェブサイトの脳波解析PCソフト「パルラックス・プロ」のコーナー を参照されたい。
詳しい解説は控えるが、2回のα波優勢ゾーンのあることが分かると思う。緊張する場面でもこのようにα波が出せるのはたいしたものである。全ての脳波測定が終了した頃には、それまでに私が抱いていた田中みな実アナの印象が一変した・・・。聡明で素敵な女性である。
「めざましテレビ」では、「ココ調」のコーナーで“モヤモヤも解消!? 泣きたい女子の涙のツボ”と題して、泣いてスッキリする効果を脳波で検証した。
一口に“涙”と言っても、栄養補給や潤滑剤、殺菌などのために眼球表面を常時流れているものと、感情に伴って流れ出るものとでは、その成分に違いがあるそうだ。
涙は血液から作られる。血液から赤血球が取り除かれてから涙腺を通して流れ出る。視界が赤く染まっては困るからだ。
この涙の成分を分析すれば、血液の成分を推し量ることができる。
悲しい映画等を観て泣いた時、ストレス反応(逃げるか闘うかの準備と行動を起こさせる)物質であるコルチゾールが涙から検出されるそうだ。そして、涙の後半では、アセチルコリンやエンドルフィンが検出されるとのこと。
アセチルコリンは、副交感神経を刺激してリラクセーションを促進させる。天然のトランキライザー(精神安定剤)である。
エンドルフィンは、安心感を促進し、多幸感をもたらす。脳内麻薬(モルヒネ)と呼ばれることもあり、いわゆる“ランナーズハイ”をもたらすのもこの神経伝達物質だ。
“ランナーズハイ”という生理を提唱されたのは、大脳生理学者の久保田競先生である。もう15年以上前になると思うが、京都大学霊長類研究所に先生を訪ねた際、私が「ウオーカーズハイも起こりますよね?」と質問すると、「そうだねー」と肯定して下さったことがある。
ロケ当日は、いきなり撮影が始まった。
松尾アナ・・・「感動的な映画を観て涙を流したとき、ストレス解消効果があると言えますか?」
和田・・・「はい、言えます。泣くという課程は、ヨーガの瞑想や高僧の座禅とよく似てるんです。松尾アナはヨーガをされますか?」
松尾アナ・・・「はい、します。」
和田・・・「ヨーガや座禅で質の良い瞑想を15分すると、それは数時間眠ったほどのスッキリ感が得られます。質の良い瞑想と泣くことの共通点は、まず、呼気がゆっくりと深くなり脱力すること。そして、意識が一点に集中すること。ヨーガでは、アーサナーというストレッチのポーズをとって、そのストレスに意識を向けたまま・・・」
この辺まで話したところでカットが掛かった。
「長い・・・」と。
ここから私とディレクター(たぶん)とのバトルが始まった。事前の電話打ち合わせで言った言わないと・・・。
私は、涙の成分が云々という解説はしたくなかった。自身の手で分析したものではないし、理論展開に納得できない部分もあったからだ。しかし、ディレクターは、涙の成分を提示するなどして簡潔に断定させてから進めたかったようだ。
バトルは延々と続いた・・・。
そして、隣の部屋に移っていた松尾翠アナが戻ってきた。「もう(話しが)同じことの繰り返しで1時間も経っているから、とにかくやってみましょう」と。
それでもディレクターと私は収まりがつかない。その後も数分間軽く意見交換?してから撮影を再開した。
松尾翠アナが百発百中で泣けるとして用意した映像は、「鉄拳パラパラ漫画作品集 第一集」(よしもとアール・アンド・シー)であった。
まず最初に、松尾翠アナの閉眼安静時の脳波を測った。
大分お待たせして苛々もさせてしまったと思うが、脳波から算出したストレス値はさほどでもなかった。
今回私が用意したストレス値算出式は以下の通りである。
ストレス値=β波帯域最大平均電位÷α波帯域最大平均電位×50
β波帯域最大平均電位とは、β波の帯域(13.0Hz以上35.0Hz未満)(今回使用した測定器は30.0Hzまで)の中で一番賦活していた周波数の平均ボルテージという意味である。
α波帯域最大平均電位についても然りである。
帯域全周波数のボルテージを足して算出するという方法もあるが、今回は賦活周波数ということに意味を持たせたかった。
また、ストレス値が20程度でストレス傾向が現れ、100を超えるとストレス過多で厳しい状況。そういうスケールになるように係数50を設けた。
映像を見ているときには、眼球運動に伴うアーチファクトが混入するために正確な脳波を測りづらい。そのことは了解の上で、鑑賞中の脳波も計測した。
私は隣の部屋で、松尾アナの表情が映し出されるモニターと脳波測定画面を観察した。
なんと、ちょうど1分で松尾アナの左目から涙がこぼれた。恐るべき集中力だ。すかさずマーカーを入れた。(グラフ中の黒の縦線)
この折れ線グラフは、9.0Hzの電圧推移だ。後で解析してみると、この9.0Hzだけがグングンと賦活していた。松尾アナが映像に集中したとき、大脳の前頭前野は9.0Hzで律動を増していたのだ。(脳波の周波数の特徴は、弊社ウェブサイトの「脳波の種類」コーナーで解説している)
松尾アナが鉄拳の映像を観る前と後の、それぞれ2分間の平均脳波がこれである。
バックのグレーが映像を観る前の脳波で、カラーが観た後の脳波である。デルタ波からシータ波の帯域はアーチファクトを多分に含んでいるので、ここでは無視する。
一目瞭然、β波は全周波数とも電圧が下がり、α波は電圧が下がっているものの優勢周波数が左にずれていることが分かる。
まず、映像を観る前のストレス値を計算してみよう。
β波帯域最大平均電位は、18.0Hzの1.9μV。
α波帯域最大平均電位は、9.0Hzの7.8μV。
よって、算出式(ストレス値=β波帯域最大平均電位÷α波帯域最大平均電位×50)により、ストレス値は12.18である。
映像を観た後のストレス値は次の通りである。
β波帯域最大平均電位は、18.0Hzの1.8μV。
α波帯域最大平均電位は、8.0Hzの7.4μV。
ストレス値は、12.16となる。
鉄拳の映像を観て泣いたことによって、ストレス値が0.02ポイント下がった。
この変化は誤差の範囲のように感じると思うが、私は、泣いてスッキリすることは断言できるとオンエアでも述べた。
それは、このストレス値もさることながら、α波帯域の優勢脳波がミッドα波からスローα波に変化していたからだ。これはもう、“スッキリ感”というよりも“安らぎ感”と言った方が良いくらいだ。
自律神経も、副交感神経がより優位になっていると思われる。
このような変化が免疫機能のアップ(ナチュラルキラー細胞の活性化)に繋がることが、財団法人島根難病研究所の亀井務教授(医学博士。精神神経内分泌免疫学、環境生理学、統合医療、補完代替医療、漢方医学、人間工学が専門)らの研究でも明らかになっている。
僅か数分の映画鑑賞でこのような脳波遷移を観察できるとは思っていなかった。こんな効果があるならば、スローα波とミッドα波でストレス値に差が出るように計算式を用意するべきだったと反省した。
番組スタッフも自身が泣ける映像を用意していた。涙はこぼれなかったが、その時の脳波がこれである。
松尾アナと同じように、β波のボルテージは下がり、α波の優勢周波数はミッドα波からスローα波に変わった。
ストレス値も、22.09から21.59へと0.50ポイント下がった
カメラの前ではなかなか泣けなくて当然だと思う。このスタッフの場合は、映像を観た後に感想を割と長めに述べたこともストレス値を下げた一因になったように感じた。まさに、語るシス(カタルシス)効果である。
貴重な脳波データが得られてワクワクしている私に、移動支度を済ませた松尾翠アナが「私の脳波、どこででも使って下さい」と、満面の笑みで声を掛けてくれた。
私は、「お忙しいのに長い時間待たせてしまって申し訳ありませんでした」と詫びながら見送った。
聡明で、癒し力さえもたたえた女子アナ二人の脳波に出会えた2月だった。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
http://www.selsyne.com/aim/
| 固定リンク
コメント