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2017年4月 5日 (水)

ジブリッシュで脳波はどうなる?

先月の2日、快活な青年から電話が入った。

昨年、NHK Eテレの番組「Rの法則」~テスト勉強に集中する方法~で、森健次朗氏(一般社団法人 日本集中力育成協会 理事長)が紹介されたメソッド「集中力カード」の効果を脳波測定で検証したが、その森氏が「脳波測定なら和田さん・・・」と紹介して下さったのだそうだ。

当時放送された様子は、このブログに「NHK Eテレ『Rの法則』で、テスト勉強に集中する方法の効果を脳波測定で検証。」のタイトルで投稿している。

今回お電話を頂戴した脳波測定の目的は、“ジブリッシュ”なる頭を空っぽにするメソッドの効果を脳波で検証したいとのことだった。

ジブリッシュ(gibberish)とは、訳の分からないおしゃべり、でたらめ語のことだ。

要するに、でたらめな言葉を発することで、普段は言葉に縛られている頭と心を解放して、リラクセーションを得るというメソッドなのだそうだ。

なるほど、よく分かった。アルファ波が沢山出そうだ。

電話の話の中で、面白いケースを聞いた。ジブリッシュを始めて間もない人の中には、「頭の右側がジンジンする。血液が流れているのを感じる・・・」と報告する人がいるのだそうだ。

でたらめ言葉を発するだけでそこまでの効果が・・・? その話しを聞いたときの私はまだ半信半疑だった。

電話をくれた青年の名は「大久保信克」、株式会社笑い総研の代表取締役社長だ。電話を切った後に同社のHPを拝見すると、ジブリッシュとラフターヨガ(笑いヨガ)の普及活動を勢力的に展開しているユニークな会社であることが分かった。

大久保氏がTEDxでジブリッシュについてスピーチしている動画もある。

その後、ジブリッシュの脳波測定実施の打ち合わせをメールでする中で、拙著「宣言 アファーメーション・バイブル ~言霊の生かし方~」の感想も頂いたので紹介する。

・・・以下、頂いた感想・・・

 ご著書を今、丁寧に読ませていただいております。

 大変感動しております。

 ジブリッシュは、先生のお言葉を借りると、(言葉によって)プログラミングされている感性的自我の循環にストップをかける、壊す力があると感じております。

 そして常々、その崩壊のあとに、言葉が大切になってくるということを感じ、言霊やアファメーションは意識的に勉強しておりました。

 先生のご著書を読ませていただくうちに、すべてがつながってきています。

 ジブリッシュとアファメーションを合わせることで、理性的自我を育て、感性的自我の自己統御がより楽しく、簡単にできる気がしております。

 「ジブリッシュのあとに求めていた答えがここにあった!!」そのような感覚です。

 また、各項目のMAにも大きな力をいただいています。

 引き寄せの法則など言われますが、皆小我の観点ばかりで、大我の観点が抜けていると思います。

 私自身高校から自己啓発書を読んできたのですが、引っかかっていた部分がよくわかりました。

 「道理」古来の日本人は当たり前に大切にしていた部分と思います。般若心経の解説も目から鱗です。

 「勇気」をはじめて読んだときは、内側から沸き起こる勇気・喜びを強く感じ、感動が溢れました。

 近年なかった、本との感動的な出会いです。アファメーションの真髄を学ばせていただき感謝致します。

 脳波測定と別の部分でも、色々とお話伺わせていただき学ばせていただければ幸いです。

 御世話になりますが、どうぞ宜しくお願い致します。

・・・以上、頂いた感想・・・

そして、先月25日に町田市でジブリッシュの脳波測定を実施した。

被験者は大久保氏を含め9名で、まず全員の基本脳波を測定した。普段は左前額部(Fp1)のみを測定するのだが、上に紹介した「右側ジンジン・・・」も検証したいとの大久保氏の意向で、左右両方(Fp1、Fp2)を同時に測った。
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脳波測定器「FM-828」は1部位しか測定できないから、2箇所測定する際には「FM-828」とPCが2セット必要となる。

センサーは弊社特製の万能脳波センサー「エンフレック」を用いた。
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全員の基本脳波を測定した後、別会場で大久保氏によるジブリッシュ誘導が実施された。
そしてまた、一人ひとりの脳波を測定した。

全員の脳波測定が終わると、測定データを一つのPCに整理し、基本脳波とジブリッシュ後の比較を脳の左右それぞれにプリントアウトした。被験者へのプレゼント用である。

まず、30分ほど頂いて「脳波のいろは」をお話しした。そして、各々に脳波測定の結果を手渡し、皆で侃々諤々・・・。約1時間の充実かつ楽しかったレクチャーを終えた。
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ひときわ目を引いたのが大久保氏(ニックネームは「のびー」)の測定結果で、これが左前額部(Fp1)の脳波だ。測定時間は2分である。グラフの左側が各定常波(アルファ波やベータ波のこと)の平均電位で、右側が優勢率である。カラーの棒グラフがジブリッシュ後で、バックに重なっているクリーム色の棒グラフがジブリッシュ前に測定した基本脳波だ。
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ミッドアルファ波(α2)が強く出ているので、聡明な脳と心であることがうかがえる。脳波バランスも、ミッドアルファ波を中心とした山型で理想的である。そして、ジブリッシュの前後で殆ど差が無いので、脳のコンディションが日常的に安定していると評価できる。

大久保氏は、ジブリッシュの体得でこのような脳コンディションを身に付けられたのか、それとも元々なのかは分からないが、とにかく“落ち着いた意識集中”であることは確かである。

右脳(Fp2)も同様だ。強いアルファモードで、ジブリッシュの前後でほぼ同じ脳コンディションだ。
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ミッドアルファ波の最高電位は、ジブリッシュ後の右脳で27μVを記録した。素晴らしい。

各定常波の特徴は、脳波の種類に掲載している。

今回の測定では、被験者9名の共通変化は見られなかった。ジブリッシュ後に肯定的な(ベータ波が弱まりアルファ波が強くなった)人もいれば、その逆の人もいた。肯定的変化になった人の中には、「聴覚が研ぎ澄まされた」との自己評価を報告する女性もいた。

例えば、リラクセーションを誘う香りや音楽を体験した場合、個人差はあるものの、ほぼ同じような脳波バランスの変化が起こる。しかし、今回のジブリッシュでは、その前後において、てんでんばらばらの結果となった。

このことは、ジブリッシュの没頭度合いに左右されたと思われる。人前で真のジブリッシュを実践するには、やはりある程度の決意を以て気恥ずかしさのハードルを越える必要がある。

ただし、変化の足並みが同じ方向に揃わなかったのは、その理由だけではない。

別の理由は、例の「頭ジンジン」現象である。

あまりに特徴的な変化だったので、脳波測定結果のプリントアウトを配った際に訊ねた。

「○○さんは特徴的な変化がありましたが、何か感じることはありますか?」

すると、大久保氏が、「えー、凄い! ○○さんはジブリッシュの後に、頭の右側がジンジンすると言ってたんです」

その人の脳波を紹介しよう。

これは、左脳の変化である。ベータ波の優勢率が2倍になっているが、平均電位は1.2μVの上昇にとどまっている。
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ところが右脳は・・・。一目瞭然、ベータ波の平均電位が倍増し、優勢率に至っては98.3%を記録した。
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これが、ジブリッシュを実践して頭の右側がジンジンすると報告する人の脳波である。

これはとても貴重な研究成果だ。

ジブリッシュというとても簡単でお金も掛からない手法で、脳波がここまで変化した。さらに、左右差がこんなにハッキリと出るのも珍しい。

ジブリッシュの効果を肯定する変化とは全く違う結果だが、頭に、それも右側にしっかりと効いていることは確かである。この被験者は、何かを切っ掛けにして突然に大久保氏と同じような脳波になる可能性がある。

話しが長くなって恐縮だが、ベータ波の増減と能力開発の関係について、私が1990年代に検証した研究を述べておきたい。今回の測定結果に類似する点があるからだ

当時私は、SSI脳力活性研究所の研究員として、速話聴取法(SSI社の登録商標は「速聴」)効果の実証実験と速話聴取マシーンの開発コーディネートを担っていた。

そのときに得た知見を、拙著「速話聴取マニュアル」のsession3に記しているので、抜粋して紹介
する。

・・・以下、抜粋した引用・・・

 当時、私は一つの仮説というか予測をしていました。それは、「初心者が聴き取ることができるぎりぎりの3倍速弱になると、言語中枢がある左側頭葉はベータ波が優勢になるであろう」ということです。この仮説は、半分正解で、半分間違っていました。いえ、間違いというよりも、更におもしろいことを発見することができたのです。

 測定は次のように行います。まず、被験者がリラックスするように誘導して、脳波の周波数全域が十分に下がるか、もしくはアルファ波が優勢になるのを待ちます。脳波が安定したら、その脳波を基準にして、速話聴取をしている時の脳波を比較していくわけです。

 測定結果は以下のようになりました。
2.8倍速付近で左側頭葉がベータ波優勢になり、ベータ波のボルテージ〔μV〕が高くなります。これは予想通りでした。言語中枢が速話音を懸命に処理しているのでしょう。そして、被験者が聴き取れない3倍速強になると、ベータ波は沈静化してしまいます。おそらく、言葉として理解できないので、言語中枢はお役御免となるのでしょう。これも予測のついたことでした。

 当初聴き取れない速度でも、繰り返し聴取していると誰でも聴き取れるようになります。このことは、経験的に分かっていることです。この経過を脳波で追跡しようと測定を繰り返していた時のことです。突然、被験者の右側頭葉で、頻繁にベータ波が優勢を示しだしたのです。
これには首をかしげてしまいました。なぜ、音楽や信号音、雑音などを処理する右側の聴覚中枢が賦活、すなわちその領域だけが活性化するのか?  「言葉として理解できないスピードだから、雑音として右側で処理される」ということは分かります。でも、雑音に速いも遅いもないだろう・・・。右側がなぜ賦活するのか、理解できなかったのです。

 なぜ、右脳の聴覚中枢が賦活するのか。予想外の現象に、私は帰納的推論に切り替え、固定観念を捨てて、被験者の能力ぎりぎりの速度で速話聴取してもらい、その時の脳波を観察することを繰り返しました。

そして、何日が経過した時だったでしょうか、ふーっと現象が見えてきたのです。右脳は、あたかもリズムをとっているかのようなのです。高速音声のリズムに懸命に同調しようとして活性化して、同調することができると、今度は左脳が活性化して言葉の意味を理解しようとする。これを繰り返しているように見えてきたのです。

そして、十分に言葉が理解できるようになると、両方の聴覚中枢の賦活性は消えてしまいます。すなわち、ベータ波は沈静化するのです。

・・・以上、抜粋した引用・・・

近頃は、「言語中枢など無い。脳の様々な部位が言語処理にかかわっている」などとも言われるのだが、脳全体を中枢神経と捉えて、それぞれの役割領域と解して欲しい。

また、例えば脳梗塞によって左の言語野神経細胞が死んでしまっても、適切なトレーニングによって右側に言語野が生じることも確認されている。'90年代に開催した能力開発セミナーで紹介していた、番組「NHKスペシャル」に登場するドイツ人男性患者の通りである。

今回の「ジブリッシュ脳波測定研究会」は、電極ペーストを用いるエンフレックで左右にセンサーを貼る作業のために、タイトな測定スケジュールを圧迫して少々焦った。しかし、ジブリッシュ後の測定では、事前に被験者に自身のおでこと耳朶をウェットティッシュで拭いてもらい、測定後は電極ペーストを拭き取ってもらうようお願いした。お陰で、スケジュールの遅れを挽回することができた。

大久保氏がおっしゃるように、ジブリッシュとアファーメーションは掛け算するに持って来いの能力開発/自己統御メソッドだ。

ジブリッシュは裸の心になること、アファーメーションは新たな服を心にまとうことである。

能力開発の段階的局面を脳波測定で追跡することにより得られるであろう知見は、「ジブリッシュ」×「アファーメーション」の効果的な指導マニュアルの制作に貢献するはずだ。

測定会が終了した後は、町田駅近くの居酒屋で催された懇親会にご招待頂いた。楽しかったー!
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感謝。

セルシネ・エイム研究所 和田知浩

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