仮眠のうまいとり方・・・。テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと。くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」からのご用命で。
テレビ番組から脳波測定のご用命を頂き、5月7日(日)に六本木のテレビ朝日を訪ねた。都営大江戸線の六本木駅で下車し、いつものように芋洗坂を下った。
このリハーサル室に隣接する控え室に案内され、脳波解析システムをセッティングした。今回は、脳波測定器「アルファテック4」と脳波解析PCソフト「マインドセンサー5」の組み合わせを用いた。
番組スタッフから脳波測定の打診をメールでもらったのが3日前。それから3往復ほどメールで遣り取りしてこの日を迎えた。最近はこんな感じで気楽にご用命頂くことも多い。
REM睡眠について若干の誤認があるようだったので、以下のようなコメントを事前にメールした。
・・・引用開始・・・
睡魔に襲われたときの15分~20分程度の仮眠或いは瞑想は、本当に頭がスッキリするので良いと思います。
以下に、留意点等を記します。(細かいことで恐縮ですが、正確を期するために・・・)
留意点:レム睡眠の定義について
ご存じのことと思いますが、レム睡眠のREMは(rapid eye movement 急速眼球運動)の略です。
添付画像「睡眠時における優勢脳波の変化(睡眠深度ダイヤグラム)」(私が作成したものですが、似たようなグラフはご覧になったことがあると思います)のREM(破線円で囲んだ部分)がそれです。
御企画において、“脱力した指からスプーンが落ちる”という時間帯は、赤線四角で囲った部分になると思われます。
赤線四角とレム睡眠の脳波はほぼ同じです。しかし、決定的な違いが以下の通りあります。
1.レム睡眠はノンレム睡眠の後に来る睡眠ステージ
2.急速眼球運動の有無(赤線四角では急速眼球運動はありません)
3.レム睡眠では筋弛緩状態(REMではよく夢を見ていますが、夢のシーンに合わせて身体が動くことのないように運動神経の興奮は抑えられています。よって、“レム睡眠を抜ける直前で脱力した指からスプーンが落ちる”という表現は適切ではありません)
筋弛緩で指からスプーンが落ちる状態は、例えば電車に乗っているときにコックリするのと同じ睡眠ステージですから、単に入眠期(睡眠ステージ1)、軽睡眠期(睡眠ステージ2)、うとうと、まどろみ等と表現する分には問題ありません。
・・・引用終了・・・
被験者は4名の男女が集められた。仮眠の実験が始まって1時間以上経過しても入眠できずに断念した人もいた。あくまでも、仮眠時間のお薦めである15分~20分程度という長さは、すぐに入眠した場合の時間だ。
幸い2名の被験者はすぐに入眠することができ、実験の目的を果たすことができた。
番組スタッフに挨拶をして達成感を抱きつつエントランスを出ると、もうすっかり日が暮れた中に東京タワーが光っていた。
翌日には脳波測定グラフを動画(mp4)化して提出する作業が残っているが、帰宅してひとまず美味しい酒を頂いた。
後日、脳波動画データなどをネット経由で提出した。この素材を織り込んだVTRがスタジオ収録で流され、それがまた編集されて完成するというステップだ。
25日のOAは次のように始まった。丁度60回目の放送だそうだ。
「みんなに教えたい投稿ハナタカ!!」は、番組最後のコーナーだ。
まずは問題提起。この女性は、普段2時間ぐらいの仮眠をとるそうだが、寝ない方が逆に楽なのかなと思うぐらい、寝て起きるのが辛いのだそうだ。
恐らく、ノンレム睡眠中に目覚まし時計で起きておられるのだろう。近頃は、睡眠中の体動を計測して、レム睡眠と思われるときにベルで起こしてくれるスマホアプリもあるので試してみるのもいいだろう。
今回のテーマは、「仕事中に眠たくなった場合のうまい仮眠のとり方」だったので、そもそも数時間の仮眠というのは想定に無い。
このグラフ「睡眠時における優勢脳波の変化(睡眠深度ダイヤグラム)」に、赤い四角で示した中で目覚めるのがうまい仮眠のとり方だ。この枠の中でなるべく長い時間の仮眠をとると良い。頭スッキリで目覚めることができる。
瞑想や座禅、自律訓練法などを行うと頭がスッキリするが、これも、深い睡眠ステージまで落ちないからだ。座禅では、自分が入眠しないために“半眼”で行う。斜め下の床を見ながら、その視線が杖のような役割を果たして入眠することを防ぐ(脳波をアルファモードかシータモードに維持する)のだ。
今月17日に放送されたNHK「ガッテン!」~これが世界最先端!“認知症”予防SP~でも、昼間の睡眠は30分がお薦めだと解説していた。脳が活動したときに増える老廃物「アミロイドβ」(アミロイドβ蛋白質)を効率良く排出できるのが睡眠なのである。
さて、今回の実験である。「スプーンを使えば仮眠がスッキリできる!?」
スプーンを指に挟んで眠る。4名中2名は入眠できなかったのだが・・・
先ほど紹介したように、ミュージックステーションのリハーサルなどで使われているだだっ広い部屋で、しかも明るくしている。理由は、オフィスなどでの仮眠を想定しているからだ。
実験開始から15分ほどでスプーンを落とした。そして、床に落ちて響いた音で目覚めた。アルファモード(緑色)だった脳波は、スプーンが落ちたときの音で途切れて目覚めた(これを「アルファブロッキング」という)。
アルファモードが途切れて入眠するのだが、分かりやすい脳波グラフを弊社ウェブページ「終夜睡眠脳波の分布グラフ例」に掲載しているので参考にして欲しい。
上のオンエア画像では、アルファブロッキングの後に弱いデルタ波(灰色)、そしてシータ波(青色)が出ているように見えるが、これは額の筋肉電位によるノイズだと思われる。このようなノイズの影響を受けたくない場合は、頭髪のある部分にセンサーを当てて測定するのだが、電極ペーストを介さないとならないので、今回は簡易測定にとどめた。
いつもの2時間睡眠よりもスッキリしたそうだ。
睡眠深度が深くなると筋肉が弛緩するのでスプーンを落とすと解説した。当たり前と言えば当たり前だ・・・
「仮眠からスッキリと目覚めるポイントは、熟睡しないということです」と自信たっぷりに解説したのだが、放送ではバッサリと切られていた。
一応満点の「ハナタカ!認定」をもらったが、前回の「玉ネギを枕元に置いて寝ると脳がリラックスして安眠」の投稿ハナタカほどには盛り上がらなかったようだ。
玉ネギの安眠効果の反響は今も続いている。講演する際にこのネタを披露すると、「詳しく教えてください」と講演終了後に来られたりする。「寝室が玉ネギ臭くなりますよ・・・」と前置きしても、「そのくらい大丈夫です・・・」と。
今回も睡眠ネタだったが、多くの人達が睡眠に課題を抱えているようだ。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
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