NHKBSプレミアム「偉人たちの健康診断」からのオファーで、新選組・土方歳三も実践した秘伝の呼吸法を脳波測定で検証。
NHKBSプレミアム「偉人たちの健康診断」~新選組・土方歳三“お掃除男子”美肌の秘密~で、私が脳波測定で協力したシーンが放送されたので振り返りたいと思う。
OA画像を、いつものように弊社「テレビ番組協力実績」紹介ページにも掲載させて頂いた。
番組から脳波測定のオファーを頂いた目的は、土方歳三が入門した日野宿本陣 天然理心流道場に伝わる秘伝の呼吸法を検証することだった。
ロケは4月20日(土)に日野市東部会館の大ホールで行われた。
ロケ現場近くに歳三の生家「土方歳三資料館」があることを知り寄ってみたが、残念ながら当日は閉館していた。
5月30日に放送された内容から、歳三の人となりをピックアップしてみよう。
1835(天保6)年、現在の東京・日野市に生誕。農民の出で、「新選組の鬼の副長」と呼ばれた。享年35歳。
本郷和人氏(東京大学史料編纂所 教授)曰く、「京都を舞台に一所懸命治安維持に務めた。だけど、時勢が見方をしてくれなかった。幕府が滅んでいくとき、幕府に準じて最後まで戦った、武士の中の武士という感じがするわけですが、実は彼は農民の子なんです」
日野宿本陣天然理心流道場に入門した歳三は、通常7年掛かると言われる天然理心流中極位目録を1年7ヶ月で修得したそうだ。
番組は、新選組隊士 井上源三郎の子孫である井上雅雄氏が会長を務める天然理心流日野道場を取材し、歳三が美肌であった理由を探った。
これが柔術を取り入れた天然理心流の極めて特徴的な技で、体幹と下半身の筋肉が鍛えられるのだそうだ。
歳三は通常の4倍以上のスピードで天然理心流中極位目録を修得したのだから、勝れた筋力を体幹と下半身に有していたであろう、そしてこのことが美肌の理由である可能性だと番組は展開した。
錦織秀氏(ポーラ化成工業 研究員)によると、日本人女性100人を調査した結果、体幹と下半身の筋肉量(80%の筋肉がある)が多い人ほど、顔のシミが少ないという相関関係があったとのこと。
同氏によると、筋肉で生成されるマイオネクチン(myonectin)というホルモンが、シミの原因であるメラニン色素の生成を抑える働きがあるのだそうだ。(2018年にポーラ化成工業フロンティアリサーチセンターが発表)
さらに、美肌を保つ天然理心流秘伝の呼吸法が紹介された。今回初めてテレビで紹介されるという指南書「剣法名談録」である。
その呼吸法(意気込みの術)とは次の通りである。
「両ひざを開き、腰を上げ、ヘソを上に向け、腹にゆっくり空気をためて、肛門を引きしめ、少しずつ息を出し入れする」
前出の井上氏によると、「この呼吸法を取り入れると、無になって、感情を抑えて、実力を出すことができる」のだそうだ。
貝谷久宣氏(京都府立医科大学 客員教授)によると、「呼吸をゆっくりすることによって怒りとか激しい陰性感情が抑えられる」とのこと。
そして、私が脳波測定した様子が紹介された。
解析の結果、秘伝の呼吸法前後で一貫してミッドα波(α2)が優勢で、θ波の出現量は前に比べて後が増したことが分かった。
ミッドα波が一貫して優勢であることは「落ち着いた意識集中」状態であると言える。また、θ波が増えたことは、ヨーガの行者や禅僧が空観を得たような心的状態で、いわゆる「覚醒θ波」である。
全周波的に電位は然程高くなかったので、この脳波バランスで電位が増してくると達人級となるだろう。
番組が紹介した脳波グラフがこれだ。綺麗なグラフだ。が、しかし、間髪入れずに私の頭の中で「?」が2つ駆け巡った。弊社「セルシネ・エイム研究所」のクレジットが標記されているのだが・・・
本稿では別の視点から脳波解析の結果を有りの儘に紹介しておきたいと思う。
秘伝の呼吸法を実施した前後の左脳(Fp1)と右脳(Fp2)の脳波を測定し、β波とθ波をピックアップして平均電位、分布率、優勢率の変化量を示したものである。
全てにおいて、β波が減り(マイナスになり)、θ波が増えている。分布率と優勢率の変化量は「ポイント」である。
β波は「せかせか感」の指標である。
程なく脳波のコーナーは終わり、番組は呼吸法の更なる効用「感情を抑えることが美肌につながる」との紹介へ進んだ。
番組では「感情を抑える」という表現を使っているが、β波が減りθ波が増えた脳は、感情を抑えていると言うよりも「感情を解き放った末に沈静化した聡明感」と言った方がふさわしい。
番組ナレーションで「感情が荒ぶり怒ることで体内にはコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。このコルチゾールが過剰に分泌されることで、肌の水分を保持するセラミドを分解してしまう可能性があることが分かってきました。ゆっくりと息を吸って深呼吸し、怒りを抑えることが潤いのある美肌を保つために重要なのです」と。
続いて、日比野佐和子医師(2年前に読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」~アンチエイジング第2弾「脳活」 カラオケで脳は若返る!?~で私が脳波測定した際にスタジオで解説された先生)による美肌解説と効果的軽運動/食事が提案された。
さらに、歳三ならではの空間把握能力が紹介され、スタジオでタレントさん達が空間把握課題に挑戦した。
そして、同志近藤勇が新政府側に斬首されたのを機に絶望し、そのグリーフ(死別などによる深い悲しみ。悲嘆。苦悩。嘆きのストレス反応。立ち直るのに数年かかる場合もある)状態から立ち直って再び戦う気力が戻ってきた理由が考察された。
番組スタッフは、歳三がグリーフで引きこもっていた会津東山温泉へ向かった。そして、心の傷をすみやかに癒やした原因は、“流れる温泉”にあるのではないかとした。
効果1.~流れの振動が血流量を上昇させる~
流れる浴槽と流れない浴槽で、血流量がこれだけ違う。
そのため、血液に含まれる鉄分が十分に脳に行き渡り、鉄分を材料に生み出される神経伝達物質セロトニン(抗うつ・抗不安効果をもたらす)が増える。
セロトニンの効果として、論文「うつ・不安にかかわる脳内神経活動と運動による抗うつ・抗不安効果」北一郎 大塚友実 西島壮(2010年)が紹介された。
効果2.~せせらぎの音がリラックスさせる~
聴覚では聞こえない2万ヘルツ以上の超音波振動にリラックス効果がある。
超高周波数音の効果として、論文「自然環境の発する音(超高周波数音)が人に与える影響」環境科学研究所(石田光男 齋藤順子 永井正則 山田博之)・工業技術センター(岩間貴司)(2010年)が紹介された。
面白かったのは、超音波が届く距離の測定だった。
せせらぎ音の発生源から数メートル離れるだけで、リラックス効果がある超高周波成分はガクンと減るそうだ。だから、出来るだけ川の近くにいた方が良い。
これを解説されたのは、日本音響研究所の二代目所長 鈴木創氏だ。
鈴木氏ともテレビ番組の別々のVTRでたまに共演する。今でも人気なのが、ブログ「CDとレコードを聴いたときの脳波。違いはあるのか? 日テレ『所さんの目がテン!』からのオファーで分かったこと。」で、多くの読者を集めている。
今回も沢山の示唆とご縁を頂いた。感謝。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
https://selsyne.com/aim/
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