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2020年9月11日 (金)

vol.324 目覚め方のコツと重要性。毎日放送「林先生の初耳学」~誰でも起きられる目覚まし音を作れる?~で、終夜睡眠脳波を測定して。

先月30日、毎日放送(TBS系列)「林先生の初耳学」で私が終夜睡眠脳波を測定した模様が放送されたのでいつものように振り返る。

 

番組ADから初めて電話を頂いたのが8月10日。「緊急地震速報のアラーム音を作ったサウンドデザイナーが新たに開発した目覚まし音なら、どんなに寝起きが苦手な人でも起きることができるのかを調べたい」とのこと。

 

翌11日10時、Zoomを利用してディレクターとサウンドデザイナー、AD、私の4人でリモートミーティングをした。

 

サウンドデザイナー小久保隆氏が今回開発された目覚まし音は、脳を段階的に無理なく目覚めさせるために4ステップの音を設定しているとのこと。

 

第一段階は右脳に寄り添う自然音、第二段階は優しい言葉で母に起こされるようなメッセージで左脳を、第三段階は両脳を刺激するミックス音、そして第四段階がスウィープ音だそうだ。

 

もちろん、大音量で叩き起こすなら簡単だ。しかしそれでは、スッキリと気持ちよく目覚めさせたとは言えない。「スッキリと気持ちいい」感がなければ、“覚醒の拒否反応”が起こって二度寝したくなる。

 

脳波研究家としての立場から予見を求められた際、「同質の原理」の重要性を発言する中で閃いたのが、この“覚醒の拒否反応”というワードである。

 

1時間半ほどのリモートミーティングで、この閃きが一番嬉しかった。オンエアでも、「いきなりベルの音が鳴ると目覚めの拒否反応が出て二度寝の原因にもなる」とテロップとナレーションで紹介された。

 

日頃、人生成功や自己実現をサポートする中で一部のクライアントに感じていた“成功の拒否反応”が閃きに影響したと思われる。

 

第四段階のスウィープ音のスウィープとは、「一掃する(sweep)」という意味だ。しゃくり上げるような人工音が何度も何度も繰り返される。そしてそのテンポが途中で速くなる。

 

これらの目覚まし効果については、昨年10月にオンエアされたTBSラジオでも私が解説している。ブログ『朝スッキリと素早く目覚める絶妙の楽曲を紹介。TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」からオファーを頂いて。』

 

さらに、寝ているときに脳がノイズキャンセリングする機能とその脳波についても、弊社ウェブサイト「睡眠脳波の測定/解析例」に掲載している脳波の分布グラフを案内しながら言及した。波形の名は睡眠紡錘波(Sleep Spindle Wave)で、目覚めているときに出れば、アスリートなどがいわゆるゾーンに入った変性意識状態で、驚異的な集中力でハイパフォーマンスを発揮する。

 

 

今回のロケ中にも被験者から幾度となく睡眠紡錘波が観察されその都度解説したが、テーマから逸れるので番組内容には含めないとディレクターから言われた。限られたオンエア時間だから仕方ない。

 

睡眠紡錘波は睡眠の中程度の深さで観察される脳波で、廊下を歩くスタッフの足音などに反応して生じた。

 

今回のロケで用いた脳波解析PCソフトは「アナライザープラス」である。画面中段右の分布グラフが睡眠深度の観察に威力を発揮する。素人が観ても分かり易いだろう。
01analyzerpluszengamen

 

 

睡眠ステージの評価基準(分布グラフの見方)画像を、以下URLに掲載している。
https://selsyne.com/aim/nowhadas/SleepEEG/bunpugraph-kaisetu2018.1.11-3.jpg

 

オンエアではこの分布グラフだけに注目して解説したが、私がロケ現場で評価する際には上段の生波形が重要な指標となる。睡眠深度毎の特徴的な波形が時折あるし、何よりノイズ混入(特に被験者の表情筋から生じるアーチファクト)の判別に必要なのである。上の参考画像では綺麗なα波が表示されている。

 

また、生波形エリアの下の全時間折れ線グラフも有用である。アナライザープラスは10時間の連続測定が可能であるが、今回は1時間毎に測定データを保存しながら進めた。万が一測定データを消失してしまうアクシデントの損失を小さくするための策である。

 

全時間折れ線グラフの時間経過は左から右に進む。参考画像では、測定を始めてから5分程は動いていたために、折れ線グラフのδ波(ピンク)がノイズの影響で強く(高く)表示されている。そのδ波は程なく沈静化し、20分辺りから再びパワーを増してきている。すなわち睡眠深度が深くなっていることを示している。

 

δ波の減増(睡眠深度の浅深)は、いわゆる90分サイクルで繰り返される。δ波が生波形の7割以上を占めれば、最も深い睡眠ステージだと判定して良い。
02suiminsindodiagram

 

 

小久保氏が開発された目覚まし音を鳴らすのは、被験者が最も深い睡眠になったときだ。しかし、最も深い睡眠は最初のノンレムで現れるのが普通である。今回のロケでは、被験者が十分に寝て、その上で朝方の睡眠が深いときに実験したいとの番組制作側からの要望だった。日常の寝起きを再現したいのだから当然といえば当然である。

 

レム睡眠のときの方が起こされにくい場合もあるが、これは被験者が夢に夢中だからだと私は考えている。目覚まし刺激が夢に同化して渾然一体となるため、そのまま夢を見続けるのだ。そしてもう一つ、ノンレム睡眠時よりも筋肉が弛緩していて身体が殆ど動かない状態であることも大きな要因であろう。これらの理由で目覚めが遅れるが、脳波の睡眠ステージとしては浅いと私は評価する。

 

ロケは、アパホテル〈六本木SIX〉のワンフロアーを借り切って行われた。
03apahotel

 

今回被験者となったタレントは3名。

 

番組で登場した順に紹介すると、一人目はギャル界の寝坊女王ことゆきぽよさん。番組で紹介された通りすぐに強いαモードとなり、それが4分程続いた後にα波がぷつりと途切れた。この瞬間が入眠である。

07nyuumin 

そして5時間の睡眠後、δモードの深い睡眠であることを確認していよいよ目覚まし実験である。

 

結果は、自然音に右脳が反応して弱いαモードが数分間続いた後に目覚めた。

 

ディレクターが部屋に入り本人にインタビューすると、ゆきぽよさんは時計を確認して「えっ、最悪 最低 5時53分じゃん!」と早く起こされた不満を口にした。しかしその後すぐに、「えっ、でも違う。いつも起きる5時と全然違う。すごい、初めてかも、目覚まし一発で起きたの」と実感を述べた。

 

次の被験者は、寝たら起きないプロレスラーの天山広吉さんである。放送された通り、リモート飲み会で酒をたらふく飲んでベッドに就いた。いつも私が言うことだが、適量を超えた飲酒後の睡眠は気絶(少々大袈裟な表現)である。

 

α波の消失と出現を短いスパンで繰り返し、一番長く20分程ノンレムが続いた後に覚醒してからはもう入眠することが無かった。そこから約6時間半のモンモンタイムはさぞかし辛かっただろう。

 

一週間後に追加ロケした際には寝酒を控え、入眠と覚醒実験も無事成功したのはオンエアの通りである。

 

最後の被験者は、謎解き王の松丸亮吾さん。子供の頃からの寝坊癖で、初めてのテレビ出演の際にも1時間遅刻して番組スタッフを待たせたのだそうだ。

 

松丸さんに脳波センサーを装着してからモニタールームに戻り、さっそく脳波測定を開始した。23時37分だ。するといきなりα波のような生波形が現れた。松丸さんを映すモニターを見ると太極拳のような体操をしていた。十数秒のことだったろうか?

 

分布グラフに目をやると、14.5Hz(画像赤丸の中心点)が一瞬強く出ていた。α波とβ波の境界付近のβ波だ。数十秒後、さらにα波寄りの波が出た。この時にはもう体操は終わっていたと思う。分布グラフでは赤丸のすぐ下のか所だ。目を開けて動き回っている状態でこのような脳波を捉えるのは珍しい。かなり集中力が高いとみた。
04matumaru145hz

 

この集中力が後に衝撃の実験結果をもたらすことになる。

 

松丸さんは部屋にリモートゲーム環境を構築し、友達と対戦ゲームを始めた。やっと就寝したのは4時22分だった。脳波測定を開始するとノイズが大きい。長時間ゲームに興じたために、眼筋が微かに痙攣しているようだった。これはちょっとよろしくないが、しばらくするとノイズも収まってきた。

 

そして8時、目覚まし実験のスタートだ。

 

目覚まし音の第一、第二と進むにつれてこのような脳波が出現し、睡眠ステージが中程度にまで浅くなった。このスピンドル波が、睡眠が継続するか覚醒するかの分岐点だ。さー、スピンドル波の盾は目覚まし音にはじき飛ばされるか、それとも防ぎきるのか?
05matumarueeg

 

そして第三段階、スピンドル波は消えて深い睡眠に戻った。第四段階のスウィープ音を鳴らしても脳波は深い睡眠状態であることを示し続けた。

 

睡眠も集中だ。松丸さんは凄まじい集中力を持っていた。

 

 

今回のオンエアでは採用されなかったが、私がインタビューに答えた内容を以下に記しておく。インタビューを横で聞いていたサウンドデザイナー小久保氏も賛同してくださった。

 

「オレキシンの分泌によって私達は目覚めます。その際、オレキシン+セロトニンで安らぎモードの覚醒となり、オレキシン+ドーパミンで熱中モードの覚醒、オレキシン+ノルアドレナリンでは闘争モードの覚醒になります。同質の原理を使って目的の目覚め方を実現する小久保先生のお考えは理に適っているし、とても重要なことなんです。」

 

目覚め方、そして目覚めたときの精神状態は重要である。ただの大音量アラームで起きてしまっては、αモードをすっ飛ばしてしまってもったいなさ過ぎる。起床時にαモードを数分間維持する時間を脳のゴールデンタイムと言って、その重要性はこのブログでも再三発信してきている。

 

8月に嬉しいことがあった。NTTレゾナント社が運営する「教えて!goo」のライターから取材を受けて私が回答した「脳波研究家に聞いた!本を読んで眠くなるとき、ならないときの違いとは?」の記事が、同サイトの人気記事ランキングの「ライフ」カテゴリーで1位、総合で2位を獲得した。先ほど紹介した神経伝達物質の違いによる精神状態の違いにも触れているので紹介する。掲載URLは以下の通りである。https://oshiete.goo.ne.jp/watch/entry/2aaf05344064f2583a49432924888c6b/


 

閑話休題

 

今回の番組を局がYouTubeの公式チャンネルにタイトル「誰でも気持ちよく起きられる!?最強目覚ましアラームを作ってみた!」でアップされている。ただし、スタジオで観ているタレントさん達のワイプ抜きは無いバージョンだ。
https://youtu.be/SAaymzuKK4o

 

また、今回の放送で利用された目覚まし音が各種音楽配信サービスからダウンロード(有料)できる。iTunesサイトではダウンロード数がベスト10入りしたそうだ。ダウンロード方法などの詳しい情報は、番組HPに掲載されている。

 

撤収作業のためにモニター室に戻ると、小久保氏と私をねぎらうメッセージが置いてあった。松丸さんのマネジャーからだ。

 

控え室も用意していただき、快適で楽しい「脳波測定/脳コン解析サービス」の実施となった。
06room

 

 

感謝。

 

 

セルシネ・エイム研究所 和田知浩

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