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2023年3月13日 (月)

vol.336 エアウィーヴマットレスとウレタンマットレスの快眠効果を脳波測定で比較検証。MBS「日曜日の初耳学」からのオファーを受けて。2023.3.13

今月5日にテレビ番組「日曜日の初耳学」の初耳トレンディで私が脳波測定協力した様子が放送されたので振り返る。

 

今回のトレンドワードは「春の睡眠」で、快眠を得るための様々な方法が紹介された。

 

番組ADから脳波測定の相談メールをもらったのが1月26日。「エアウィーヴマットレス」と「通常のマットレス(ウレタン)」の快眠度を比較、併せて米軍式睡眠法も検証したいとのこと。

 

実験方法などを遣り取りする中で、30日には被験者がオードリーの春日俊彰さんであることが分かった。

 

「うーん、大丈夫かなー」と私の頭をよぎった。春日さんの脳波は2年前に他の番組で測定したことがあり、その際は結局眠ることができないまま朝を迎えた。楽しくも過酷な設定だったので、眠れなくても致し方なかったのではあるが。

 

その番組は以下のブログで紹介している。

 

vol.332 本気チャレンジの遊びが、普段の脳波測定実験では得られない知見を提供してくれた。TBSテレビ「水曜日のダウンタウン」からのオファーを振り返る。2021.9.20 

 

ただ今回は「眠れなかった」では企画失敗となるから、念のためADにこの情報を伝えた。

 

2月9日、麻布十番のハウススタジオでロケは行われた。地下鉄から上がったここから徒歩数分の所だ。
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クルーによって撮影機材がセッティングされ、私も脳波測定機材の配置と測定テストに万全を期した。

 

今回の実験に商品を提供されたメーカーの睡眠健康指導士と広告代理店、ヘッドスパの施術者とマネジャーの皆さんとご挨拶を交わしつつ春日さんの到着を待った。

 

程なくして春日さんが到着し、打ち合わせと準備をしている様子が伝わってくる。

 

そして、私たちが控えていたリビングに春日さんが現れ、導入の撮影が始まった。
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カメラマンやディレクター達の後ろで、私は春日さんの気が散らないように極力気配を消しつつも、ロケの進行と春日さんの言動を把握することに努めた。

 

そしていよいよ脳波測定である。

 

寝室に移動した春日さんの元に私も呼ばれ、今回初めて言葉を交わした。ディレクターから「春日さんは眠れると思いますか」と質問された私は、「春日さんなら眠るんじゃないですかね」とそれまでの自身の発言をひるがえす返答をしてしまった。

 

そして、(オンエアではバッサリ不採用だったが)一頻り前回の過酷ロケについて春日さんと話に花を咲かせた。

 

そもそも「水曜日のダウンタウン」で入眠できなかったのは、先にリンクしたブログで紹介した通りの条件なのだから・・・。今回導入部の春日さんのコメントを聞いていて、リベンジするんじゃないかと思えた。

 

実験の成功を祈りつつ、春日さんに脳波センサーを装着した。
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リビングをモニタールームにして、刻々と送られてくる春日さんの脳波と暗視カメラの映像に対峙した。

 

編集される際のヒントとなるように、入眠やその深度はもちろんのこと、体動や環境変化などのイベントがある度に脳波と照らし合わせながら実況解説していく。
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そして無事に睡眠脳波測定は終了した。

 

睡眠脳波の測定は当然長丁場となるのだが、春日さんの寝つきが良くて、当初予定よりも早く比較データが取れた。

 

エアウィーヴマットレスとウレタンマットレスの快眠効果に明かな差があったので、この結果比較棒グラフを示しながら総評を述べた。
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中央棒グラフ中の手前カラー棒グラフがエアウィーヴ、それに重なった奥グレーの棒グラフがウレタンである。どちらもノンレム睡眠期間の平均ボルテージなのだが、エアウィーヴの方がデルタ(δ)波(紫色)と睡眠紡錘波(オレンジ色)が強いことが分かる。

 

グラフの見方の詳細は弊社「睡眠脳波ラボ」に掲載しているので参照されたい。

 

自信を持って解説したが、番組制作側には満足してもらえないという“あるある”現象にはまってしまった。番組視聴者は必ずしも脳波に関心があるわけではなく、出演者や他のことに興味があったり、ながら的に観ているという前提があるのだろう。私がセミナー受講者に話すのとは違って当然である。

 

とはいえ春日さんが無事入眠し実験結果も肯定的となったので、皆さんとハイタッチをするぐらいの気分で意気揚々と現場を後にした。(中立で評価すべき測定者の態度としては失格かもしれないが)

 

ロケ翌日の10日には改めて脳波測定結果のグラフとExcelにデータを読み込んで解析したグラフ及び測定中のイベント(要点)を時系列に列挙してADにメール添付で送った。

 

例えば、このグラフはノンレム睡眠時のデルタ波に注目した比較である。
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左の比較グラフはデルタ波全域の平均電位で、右はデルタ波の中でも1Hzに絞ったグラフである。1Hzのみの方がより深い睡眠ステージ(熟睡)の指標となる。本当はもっと低い周波数も観たいのだが、本システムでは1Hzが限度である。現在、メーカーにはもっと低い周波数も測定できるモデルの開発を提案している。

 

話を戻そう・・・

 

一目瞭然、エアウィーヴのデルタパワーが強いことが分かる。デルタパワーが強いと、身体の回復力においても有利だと言われている。

 

次に、12日に番組へ提供した経時的分布グラフを紹介しよう。

 

時系列で脳波の変化が俯瞰できるので、入眠潜時(寝落ちするまでに要する時間)や睡眠深度の変化がよく分かる。
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白の半透明にした部分が入眠潜時で、エアウィーヴの最初に強いデルタ波が出ているように見える箇所は体動によるアーチファクト(筋電ノイズ)である。春日さんが寝る態勢を整えている準備中ということだ。

 

モニタールームに戻ってその様子を確認しつつ私も観察態勢を整える動きをしていた。

 

するとその直後、そらしていた視線を戻すと「一瞬アルファ波が出た後に消失している」ことに気づいた。

 

おもわず「わっ、もう眠った・・・」と小声で叫んだ。

 

その後春日さんは二度ほど体動し、5分頃のアルファ波を最後に覚醒アルファ波は出なくなった。

 

一方ウレタンマットレスに寝たときは、覚醒アルファ波が28分頃まで続いているのが分かる。

 

30数分から40分手前までは覚醒アルファ波と睡眠紡錘波(アルファ波とベータ波の境界付近)が共に出ているような、何とも判定者泣かせの脳波が断続した。

 

入眠判定は覚醒アルファ波の消失をもって宣言するが、そのアルファ波の断続が何度も繰り返すことがある。

 

その場合は、「ネタ、オキタ、ネタ、オキタ・・・」と宣言を繰り返すことになる。

 

これを避けるために、アルファ波の消失経過時間を長めにとることもある。

 

今回は実験の性質上、入眠判定条件を厳しく(長めに)した。

 

同じアルファ波でも、覚醒アルファ波から睡眠紡錘波(Sleep spindle)へとシフトしているのが分かるだろうか。

 

睡眠紡錘波は12~14Hz程度とされるが、希に10Hz辺りで観察されることもあるので注意が必要だ。

 

このように、快眠度(質の良い睡眠)を評価する際には、入眠潜時やデルタパワー、いわゆる90分サイクルのパターンや経時的分布グラフによる俯瞰など、定量/定性の両面を駆使する。

 

製品開発の指標として、あるいは商品の訴求力アップを目的として、弊社「脳波測定/脳コン解析サービス」 をご利用頂いている。

 

閑話休題

 

14日にはナレーションの原稿と脳波グラフの添削依頼がADから届いた。スタジオ収録も控えているはずだから早急に添削と補足画像8枚を作成してその日のうちに返信した。

 

これはその中の1枚である。
202335oa08

 

寝返りした時にも目覚めにくいというエアウィーヴの特長が見事に観察された。

 

レム睡眠では、夢に反応して体動することを防ぐために、脳からの運動神経をオフにしている。ところがノンレム睡眠ではオンの状態だからむしろ頻繁に寝返りをする。この時に寝具のせいで目覚めてしまうのはもったいないのだ。

 

周波数帯域の区切りが編集者に正しく伝わっているか不安だったので、既にスタジオ収録も終わったであろう3月1日になっても補足資料として以下の画像を提出した。
202335oa09

 

そうして3月5日(日)のオンエアに至ったのである。

 

番組では「2分で入眠する」ことを快眠判定基準の一つにしていたが、もちろん普段はこんなに短い入眠潜時を目指す必要はない。こんなに早く寝落ちしたら、「お疲れなのですね」と評するのが普通である。

 

むしろ入眠潜時のアルファモードを大切に生かして欲しい。それを私がレクチャーしたセミナー動画を弊社サイトに掲載している。
https://selsyne.com/aim/audiovisual/contents/0085.mp4#t=603

 

オンエアはされなかったが、今回の実験で嬉しい副産物もあった。

 

それは、ヘッドスパを受けている最中のアルファ波が綺麗に測定できたことだ。春日さんがヘッドスパの施術者に心地よく身をゆだねていることが伺えた。

 

施術者が被験者に触れるとアーチファクトが混入してしまい綺麗な脳波が測れないものだが、その改善方法の可能性を感じさせてくれた。

 

そろそろ本稿を終えるが、執筆中には現在自由脳波研究中のジャズ音楽をBGMに掛けていた。とても良い気分だ。

 

次回はこのフルートジャズ音楽の脳波研究を紹介したいと思っている。

 

感謝!

 

 

セルシネ・エイム研究所 和田知浩

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