vol.351 企業研修のマッチングメディア「キーセッション」からのオファー。2024.6.7
先月24日、企業研修講師としてインタビューのオファーを受けた。
この記事が昨日掲載されたので紹介する。
研修導入企業と講師をマッチングしている「キーセッション」、掲載ページは以下URLである。
https://keysession.jp/media/wada-chihiro/
本ブログでは、その内容を音声で紹介する。
先月24日、企業研修講師としてインタビューのオファーを受けた。
この記事が昨日掲載されたので紹介する。
研修導入企業と講師をマッチングしている「キーセッション」、掲載ページは以下URLである。
https://keysession.jp/media/wada-chihiro/
本ブログでは、その内容を音声で紹介する。
大阪・泉佐野市の株式会社カイロベーシックからご用命頂き、4月27日に出張して脳波測定/脳コン解析サービスを実施した。その時に撮影した動画の編集が完成し同社からYouTubeで公開されたので紹介する。
施術者は株式会社鳳凰社の代表取締役である旭太郎先生だ。
被験者をタッピングしたり擦ったりする施術なので、脳波測定にはアーチファクト(ノイズ)が乗ってしまう。よって、施術中の脳波よりも、その前後を測定して比較するのが普通だ。
このことをご了承頂いた上で施術中の脳波も測定した。
まず、施術の前後比較だが、施術後の脳波がδ(デルタ)波からθ(シータ)波に掛けて増強した。特にδ波の増強には目を見張るものがある。
動画で話しているのでここでは詳しく述べないが、δ波が増強したということはデトックス(解毒/浄化)効果が高まったと言える。
視聴者に誤解を与えてしまう私の解説ミスが1箇所あったのでここで訂正させて頂く。
日中の活動によって溜まった老廃物がδモード(δ波が優勢に出ているとき)下の脳で洗い流されるのだが、この洗い流される物質を“アデノシン”と私が言っている。
しかし、これは“アミロイドβ”が正しい。
アデノシンは、人が活動して疲労することによって生成される物質で、これが脳内でアデノシン受容体に結合することによってヒスタミン(覚醒を維持させる物質)の分泌を抑えて、結果的に睡眠へと誘導する。いわゆる“誘眠作用”の働きである。
動画の後半では、老廃物としてアデノシンとアミロイドβの両方を言っているが、アミロイドβのみにするべきだった。アデノシンは疲労物質だ。
活動や疲労によって増加し、睡眠によって減少するという意味では同じだが、その働きは全く違う。
「視聴者の皆様、動画制作に携わった皆様、誠に申し訳ございません。脳の機序を正しくお伝えできるよう、これからも研鑽して参ります」
さて、今回の脳波解析で悩まされたのは、やはり施術中の脳波だ。
その異常なほどに高まるθ波とα(アルファ)波の特異脳波は動画で確認して欲しい。
撮影現場では、動画にもあるように「旭先生が被験者(患者)に触れるので脳波グラフにアーチファクトが含まれているリスクがある」ことを前置きした上で解説した。
後で編集できることなので、撮影時には否定的な(アーチファクトであり施術効果が測定されたものではない)ことから肯定的な(施術効果が特異脳波として測定された)ことまでを網羅して解説しておくのだ。
脳波に関係なく施術効果は素晴らしく、それを脳波の側面からもしっかりと解説できたことに意気揚々としながら同社を後にした。
しかし、その特異脳波はやはりアーチファクトである可能性が高い。
動画編集が始まる前にこのことは念押ししておかないと、折角制作された動画を後で大幅カットしてもらわなければならなくなる・・・。帰りの新幹線から「アーチファクトである可能性が高い」という旨を断腸の思いで同社にメールした。
詳しく分析するために、施術の様子と脳波グラフを同期した動画を同社から提供してもらい、旭先生と被験者の動き、生波形、そして棒グラフを具に観察した。
やはり、旭先生が被験者に触れるリズムと生波形の突発波が同調している。旭先生のタッピングが4.5Hzで、このリズムがθ波の増強としてグラフに表れていた。また、そのようなときに倍音(今回の場合は4.5Hzをピークに9.0Hz、13.5Hz、18.0Hz、22.5Hzが強く出ている)現象が生じることもあった。
私の見解を以下のように同社へ提出した。
「施術前後の比較でδ波が倍増したのでデトックス効果は謳えるが、施術中にθ波が増強したように見える部分はアーチファクトの可能性が高い」
同社もとても残念だったと思うが、この私の見解を受け入れ、その後も意見交換しつつ1ヶ月後には確認用動画を作り上げて提供してくれた。
良い出来だった。アーチファクトの件も私の見解を反映させて真摯に作られていた。これなら、脳波が分かる人が観ても文句はないだろうと思った。しかし、それと同時に、旭先生の施術能力を逆に限定評価してしまっているのではないかという気持ちが湧いてきた。
そんなことは絶対にしたくない。
タッピング動作がアーチファクトになっている可能性は高い、しかし、この刺激が実際にθ波を高めている可能性もある。
脳波学では、被験者に光の明滅刺激を与えて脳波の変化を調べる手法がある。この光刺激による脳波の反応を“光駆動”という。
だから、タップ駆動(タッピング駆動)があってもおかしくない。
タッピングにより生じたアーチファクトの中に実際の脳波増強が含まれている可能性がある。それなのに、アーチファクトであると一刀両断するのは評価者の傲慢と思慮の欠如ではないか。
また、倍音というのは一番低い周波数の基音から2倍、3倍、4倍へと行くに従って順に小さくなるものだが、今回の脳波測定では、一番低いθ波(基音)よりもα波が大きくなった箇所もある。これは恐らく、本来の脳波(α波)にアーチファクトが乗っているからだろう。
あるもの(能力)を無いと言ってはいけない、さりとてアーチファクトを以て能天気に喜ぶわけにもいかない。
そんな心構えで落としどころを探りつつ、更に2ヶ月遣り取りして完成したのが本動画である。
同時に、脳波分析法を更に向上させるためのプロジェクト準備に着手した。
普通は、脳波の生波形を観ればアーチファクトの混入をおおよそ判断できる。判断方法の例を弊社ウェブページ「睡眠脳波ラボ」に掲載している。
私が製品企画顧問を拝命している脳波測定器メーカーのフューテックエレクトロニクス株式会社と横浜市立大学(正式なスタートはまだなので教授名の公表は控える)との協同で、AI(人工知能)技術等を駆使した脳波分析手法の構築だ。
これまでにも、大小問わず複数の企業からご用命頂いて、AIの教師役を務めたことがある。すなわち、アーチファクト混入の有無を判断してAIにフィードバックする役割だ。
しかし今回の旭先生の施術では、タッピング時の突発波はそれと分かるが、擦った際に表示する強いθ波の生波形では、アーチファクトの混入を判断することはできなかった。本来の脳波と同じような滑らかな正弦波様だからだ。
よって、教師ありのAI開発では事足りず、教師なしでAIに学習させるための手法が必要である。
詳しくはまだ公表できないが、何としても実現したい。
カイロベーシック社からYouTubeで公開された動画は以下の通りだ。
■【対談編】旭先生の“新施術”で脳波がとんでもないことに…!? (7月26日公開)
■【身体の変化/ご感想編】寝ていないのに、良く寝た後のようなスッキリ感が…? (7月28日公開)
色んな立場の人と脳波を探究できていることにわくわくと感謝している。ありがとう!
昨年の12月27日、大阪から脳波測定/脳コン解析サービスに関する相談の電話があった。
その内容は、妹さんが作曲をしてフルートを演奏したCDが、聴いた人を心地よく眠らせたり対人恐怖症、多動症の様な症状を持っておられる方が癒やされたり、或いは動物までもが眠ったりする現象があるので脳波を測ってみたいとのことだった。
すぐに妹(MAHO)さんご本人からも電話を頂いた。
「クラシック音楽のフルート奏者なのですが、昨年秋からJAZZの活動を開始して、その後作曲も手掛けて、この秋にCDを作成しました。これを聴いた人から、『リラックスして脳が休まる』という声を多く頂きます。クラシックを演奏していた時はこのような反応は少なかったです。LIVEなどでも、オリジナル曲を私自身が演奏した場合によくこのような反応があります。このような感想が多い場合、スピリチュアル音楽のような扱いになりがちなのですが、そうではなくて、“オリジナルのJAZZ”というジャンルとして、科学的にも証明して人々に広がることを私は希望しています。」
私もビビッときた。
年末年始の方が被験者を集めやすいとのことだったので、実験日は一週間後の1月3日と決まった。幸い新幹線のチケットも取れた。
CDを聴くことでβ波の沈静があるのか、それともα波かθ波の増強、或いはオフモード(全ての帯域が沈静)化するのか? 被験者が眠った場合はδ波がどれだけ強くなるのか? 様々な可能性を想定しつつ、当日の実験手順をメールで打ち合わせした。
実験当日は品川から始発ののぞみで京都まで、そこから近鉄に乗り換えて車窓を楽しみながら生駒へと向かった。近鉄京都線の乗車は人生初だ。
生駒駅にはMAHOさんのお義兄さんが車で迎えにきてくださった。
そして、音響バッチリのリビングにMAHOさんのjazzフルートCDが再生される中、実験は順調に進んだ。
全ての脳波測定を終えた後、被験者の皆さんも含めて脳波のいろはを30分程レクチャーした。後日提出するレポートを少しでも有意義に理解してもらうためだ。
実験途中には昼食を頂き、帰り際には「美味しいですから道中にお召し上がりください」とお土産まで頂いた。
私は20代前半の二年間、大阪・門真の自動機械製造会社で働いていた。生駒山にドライブしてきたと同僚からたまに聞くことがあったが、私は一度も来たことがなかった。
お昼休憩にそんな話をしていたから、帰りも送ってくれたお義兄さんが、これが生駒山だと教えてくださった。
さすがに3日はUターンラッシュが始まっていて新幹線便の前倒しはできなかったので、頂いたお土産に舌鼓を鳴らしながら夜の京都独り観光を楽しんだ。
帰京後は数日間正月気分を味わってからレポート制作に取り掛かり、中旬にはレポート・スタンダード+αとして納品した。
通常ならばこれで一件落着なのだが、本件はそうならなかった。
「あの脳波は一体何を意味するのか?」と、研究者としての宝の糸口を垣間見たような思いがずっと私の心にあったからだ。
その脳波を出したのが、実はMAHOさんご自身である。
当初、MAHOさんは自身の脳波を測るつもりはなかったようだ。だから私が「ぜひ測定してみましょう!」とリクエストした。
他の被験者と同様に、2分間の無音後にCDを6分間再生し、最後の1分間はまた無音にした計9分間の測定だ。
測定を開始してα波がすぐに途切れてそれが50秒程続いた。これは実験依頼者によくある現象だ。受け身で測られることができずに、実験プランや結果について思考が働いているためにα波が形成されづらいと思われる。
その後は9.0Hzの覚醒α波が概ね継続して出ているので目覚めていることが分かる。
注目して欲しいのはδ波だ。音楽が再生された2分目と同時に出始め、3分目の手前から1.5Hzのδ波がピンポイントでみるみる高まった。測定部位はFp1(左前額部)である。
経時的分布グラフの上に示した折れ線グラフが1.5Hzのデルタパワー(電位)である。
ここまでδ波が強く出ると通常は熟睡状態だ。しかし覚醒α波も並行して出ているので目覚めている。測定後に当然MAHOさんも「ずっと目覚めていました」と答えた。
Fp2(右前額部)にはこれほど顕著な脳波は見られなかった。
MAHOさんが奏でて録音したCDから再生されるこのJAZZフルートのテンポやリズム、メロディー、そして音色や強弱が聴く人の脳と共鳴したとき、快眠や癒しをもたらすのかもしれない。
レポート提出後の1月17日、MAHOさんに「セルシネの自由研究として研鑽を深めたいので音源が欲しい。もしも既に商品化されていてネットで購入できるならサイトを教えて欲しい」旨をメールした。
まずは脳波測定をしながら全曲を聴いてみた。一番強いα波が出たのが「Moonlight Cafe」だ。
この曲が実験で用いたもののように感じたが、念のためMAHOさんに確認した。
実験で用いた曲は「Moonlight Cafe」で間違いないとのこと。
「Moonlight Cafe」を選曲したその理由をたずねると、「直感です。当日の脳波測定直前に直感で決めました。曲が脳に浸透していくイメージがあります」との回答だった。
研究する曲を「Moonlight Cafe」1本に絞った。
最初の無音が2分54秒。脳波測定器とCDプレーヤーをスタートしてから自身の体勢を整える。脳波を解析するときには最初の1分を切り捨てて、残りの1分54秒間を閉眼安静(基準)の脳波として用いる。独り実験のため、実験開始のルーチンワークで脳波にアーチファクト(ノイズ)が乗ってしまうからデータの切り捨てが必要なのだ。
「Moonlight Cafe」が6分6秒、無音が1分54秒で計8分。これを7回繰り返す。最後の無音は1分6秒足して3分として少し長めの余韻も観察する。これで丁度1時間の実験となる。
仕事の合間を縫って約3ヶ月間研究を続けてきた。
この種の実験の場合、例えばα波の平均電位を単純に比較しても意味がない。なぜなら、測定中に眠ってしまう場合があるからだ。リラックスしても眠ったら肯定指標のα波は低下する。そうかといって眠気に耐えて測定を続けるのは本末転倒だ。
入眠潜時(開始から寝落ちするまでの時間)についても然りで、単純に短さを比較して睡眠導入効果を云々するのも無理がある。
なぜなら、入眠圧(睡眠圧)はその時々(寝不足や疲労、環境など)で大きく異なるので、細切れ時間を利用した今回のような実験スタイルにおいては正確性や一貫性、再現性に欠けるので科学的とは言えないのだ。
心身の活動によって脳に蓄積される疲労物質/老廃物とも言えるアデノシンは、覚醒圧を高めるヒスタミンが放出されるのを阻害する働きによって入眠圧を高める。寝落ちの鍵はアデノシンが握っているのだ。
ただし、少々のアデノシンでは入眠できないこともある。その原因が交感神経の高ぶりだ。
MAHOさんが奏でるJAZZフルートには、その交感神経の高ぶりを鎮めてくれる作用がある。
しかし、入眠潜時でそれを評価するためには、シーソーの一方であるアデノシン量を把握するか概ね変わらないであろう条件(例えば同じ時間帯)で実験する必要がある。今回の実験スタイルではそれが難しいという訳だ。
独り自由研究で宝の糸口を見つけることはできるのか・・・
前置きが長くなったが、一つの研究成果を以下に紹介する。
2月5日~4月2日に掛けて測定した全13回の測定結果である。
MAHOさんのJAZZフルート「Moonlight Cafe」を聴くことで私のα波の最高電位がこれほど顕著に高まったのだ。
なぜ最高電位を比較するのか。
既に述べた通り、聡明な覚醒度を高める(α波が強くなる)場合と逆に寝落ちさせる(覚醒α波が弱まる)場合があるから、平均すると打ち消しあってしまう。
しかし、最高電位を比較するのは有意義だ。聡明な覚醒度を高める場合は当然α波の電位は高くなるし、逆に寝落ちした場合でもその直前にはα波が強く出ることが多いからだ。
測定期間中に実感として手応えがあったが、このように集計して一目瞭然の結果となり、鑑賞の聡明効果を裏付けすることができた。
「1時間も聴いていたら、最初の閉眼安静時(1分54秒間)よりもα波が強くなって当然じゃない?」と思う人もいると思うが、脳波(意識)はそういうものではない。
むしろ長く測っていると意識はだれるから聡明度が経過時間に反比例することもしばしばだし、最高電位がこれほど変化することも通常はない。
また、私は自分の脳波を37年間測ってきているので、閉眼安静時の脳波はこんなものであることも知っている。
近頃は色んな脳波測定器があって、中にはとても強い脳波を示すものもある。仕様の違いによって出力されるデータは違うということを念のため付言する。
私は、気律脳波検定において、一定の条件でθ波~α波が40μVを超えた人に「気律脳波の達人」認定証を授与しているが、私自身の脳波はそんなには出ない。
ところが、今回の実験では鑑賞時においてα波が30μVを超えた。それも3回。達人脳波まであと一歩だ。あと一歩と言っても10μVの壁はとても大きい。それでも、目標を捉えそうな感覚を垣間見たのも事実である。
統計学の見地から有意差を述べるには肯定的すぎて躊躇するが、有意確率pは0.00015となった。通常は0.05(5%)か0.01(1%)を有意水準に設定するから、桁違いの有意性だ。
これは被験者が私一人だからだ。音楽に限らず芸術を鑑賞する際の感受性は個人差も大きい。無作為になるべく多くの被験者を対象にすることで、結果は人類にとっての普遍的な値となるだろう。
当初、MAHOさん達は犬の脳波測定も希望されたほどだから、実験方法を確立できれば動物や、もしかすると植物までもこの効果を実証できるかもしれない。
いずれにしても、これほど強いα波がトリガーとなり、例えばアデノシンによって入眠圧があればスムーズに眠るだろうし、逆にオレキシンやヒスタミンによって覚醒圧があれば聡明度を増すだろう。
ヒスタミンの生産を促すオレキシンについては、本ブログの「vol.324 目覚め方のコツと重要性。毎日放送『林先生の初耳学』~誰でも起きられる目覚まし音を作れる?~で、終夜睡眠脳波を測定して。2020.9.11」で紹介している。
前述したように、オレキシンとヒスタミンは主従関係にあるが、その両方が感情を司る部位から並列的に制御されていることを筑波大学を中心とした研究チームが2018年に発表している。
こうした脳内機序にMAHOさんのJAZZフルートが効果的に作用しているであろうことは想像に難くない。
クラシックよりもジャズで奏でた方が聴者に響くというのは、MAHOさんの癒し力が自由に解放されるからであろう。
この原稿も、実験用に作った「Moonlight Cafe」をBGMに流しながら快適に書き進めてきた。
MAHOさんのJAZZフルート、お薦めである。
今月5日にテレビ番組「日曜日の初耳学」の初耳トレンディで私が脳波測定協力した様子が放送されたので振り返る。
今回のトレンドワードは「春の睡眠」で、快眠を得るための様々な方法が紹介された。
番組ADから脳波測定の相談メールをもらったのが1月26日。「エアウィーヴマットレス」と「通常のマットレス(ウレタン)」の快眠度を比較、併せて米軍式睡眠法も検証したいとのこと。
実験方法などを遣り取りする中で、30日には被験者がオードリーの春日俊彰さんであることが分かった。
「うーん、大丈夫かなー」と私の頭をよぎった。春日さんの脳波は2年前に他の番組で測定したことがあり、その際は結局眠ることができないまま朝を迎えた。楽しくも過酷な設定だったので、眠れなくても致し方なかったのではあるが。
その番組は以下のブログで紹介している。
vol.332 本気チャレンジの遊びが、普段の脳波測定実験では得られない知見を提供してくれた。TBSテレビ「水曜日のダウンタウン」からのオファーを振り返る。2021.9.20
ただ今回は「眠れなかった」では企画失敗となるから、念のためADにこの情報を伝えた。
2月9日、麻布十番のハウススタジオでロケは行われた。地下鉄から上がったここから徒歩数分の所だ。
クルーによって撮影機材がセッティングされ、私も脳波測定機材の配置と測定テストに万全を期した。
今回の実験に商品を提供されたメーカーの睡眠健康指導士と広告代理店、ヘッドスパの施術者とマネジャーの皆さんとご挨拶を交わしつつ春日さんの到着を待った。
程なくして春日さんが到着し、打ち合わせと準備をしている様子が伝わってくる。
そして、私たちが控えていたリビングに春日さんが現れ、導入の撮影が始まった。
カメラマンやディレクター達の後ろで、私は春日さんの気が散らないように極力気配を消しつつも、ロケの進行と春日さんの言動を把握することに努めた。
そしていよいよ脳波測定である。
寝室に移動した春日さんの元に私も呼ばれ、今回初めて言葉を交わした。ディレクターから「春日さんは眠れると思いますか」と質問された私は、「春日さんなら眠るんじゃないですかね」とそれまでの自身の発言をひるがえす返答をしてしまった。
そして、(オンエアではバッサリ不採用だったが)一頻り前回の過酷ロケについて春日さんと話に花を咲かせた。
そもそも「水曜日のダウンタウン」で入眠できなかったのは、先にリンクしたブログで紹介した通りの条件なのだから・・・。今回導入部の春日さんのコメントを聞いていて、リベンジするんじゃないかと思えた。
リビングをモニタールームにして、刻々と送られてくる春日さんの脳波と暗視カメラの映像に対峙した。
編集される際のヒントとなるように、入眠やその深度はもちろんのこと、体動や環境変化などのイベントがある度に脳波と照らし合わせながら実況解説していく。
そして無事に睡眠脳波測定は終了した。
睡眠脳波の測定は当然長丁場となるのだが、春日さんの寝つきが良くて、当初予定よりも早く比較データが取れた。
エアウィーヴマットレスとウレタンマットレスの快眠効果に明かな差があったので、この結果比較棒グラフを示しながら総評を述べた。
中央棒グラフ中の手前カラー棒グラフがエアウィーヴ、それに重なった奥グレーの棒グラフがウレタンである。どちらもノンレム睡眠期間の平均ボルテージなのだが、エアウィーヴの方がデルタ(δ)波(紫色)と睡眠紡錘波(オレンジ色)が強いことが分かる。
グラフの見方の詳細は弊社「睡眠脳波ラボ」に掲載しているので参照されたい。
自信を持って解説したが、番組制作側には満足してもらえないという“あるある”現象にはまってしまった。番組視聴者は必ずしも脳波に関心があるわけではなく、出演者や他のことに興味があったり、ながら的に観ているという前提があるのだろう。私がセミナー受講者に話すのとは違って当然である。
とはいえ春日さんが無事入眠し実験結果も肯定的となったので、皆さんとハイタッチをするぐらいの気分で意気揚々と現場を後にした。(中立で評価すべき測定者の態度としては失格かもしれないが)
ロケ翌日の10日には改めて脳波測定結果のグラフとExcelにデータを読み込んで解析したグラフ及び測定中のイベント(要点)を時系列に列挙してADにメール添付で送った。
例えば、このグラフはノンレム睡眠時のデルタ波に注目した比較である。
左の比較グラフはデルタ波全域の平均電位で、右はデルタ波の中でも1Hzに絞ったグラフである。1Hzのみの方がより深い睡眠ステージ(熟睡)の指標となる。本当はもっと低い周波数も観たいのだが、本システムでは1Hzが限度である。現在、メーカーにはもっと低い周波数も測定できるモデルの開発を提案している。
話を戻そう・・・
一目瞭然、エアウィーヴのデルタパワーが強いことが分かる。デルタパワーが強いと、身体の回復力においても有利だと言われている。
次に、12日に番組へ提供した経時的分布グラフを紹介しよう。
時系列で脳波の変化が俯瞰できるので、入眠潜時(寝落ちするまでに要する時間)や睡眠深度の変化がよく分かる。
白の半透明にした部分が入眠潜時で、エアウィーヴの最初に強いデルタ波が出ているように見える箇所は体動によるアーチファクト(筋電ノイズ)である。春日さんが寝る態勢を整えている準備中ということだ。
モニタールームに戻ってその様子を確認しつつ私も観察態勢を整える動きをしていた。
するとその直後、そらしていた視線を戻すと「一瞬アルファ波が出た後に消失している」ことに気づいた。
おもわず「わっ、もう眠った・・・」と小声で叫んだ。
その後春日さんは二度ほど体動し、5分頃のアルファ波を最後に覚醒アルファ波は出なくなった。
一方ウレタンマットレスに寝たときは、覚醒アルファ波が28分頃まで続いているのが分かる。
30数分から40分手前までは覚醒アルファ波と睡眠紡錘波(アルファ波とベータ波の境界付近)が共に出ているような、何とも判定者泣かせの脳波が断続した。
入眠判定は覚醒アルファ波の消失をもって宣言するが、そのアルファ波の断続が何度も繰り返すことがある。
その場合は、「ネタ、オキタ、ネタ、オキタ・・・」と宣言を繰り返すことになる。
これを避けるために、アルファ波の消失経過時間を長めにとることもある。
今回は実験の性質上、入眠判定条件を厳しく(長めに)した。
同じアルファ波でも、覚醒アルファ波から睡眠紡錘波(Sleep spindle)へとシフトしているのが分かるだろうか。
睡眠紡錘波は12~14Hz程度とされるが、希に10Hz辺りで観察されることもあるので注意が必要だ。
このように、快眠度(質の良い睡眠)を評価する際には、入眠潜時やデルタパワー、いわゆる90分サイクルのパターンや経時的分布グラフによる俯瞰など、定量/定性の両面を駆使する。
製品開発の指標として、あるいは商品の訴求力アップを目的として、弊社「脳波測定/脳コン解析サービス」 をご利用頂いている。
閑話休題
14日にはナレーションの原稿と脳波グラフの添削依頼がADから届いた。スタジオ収録も控えているはずだから早急に添削と補足画像8枚を作成してその日のうちに返信した。
寝返りした時にも目覚めにくいというエアウィーヴの特長が見事に観察された。
レム睡眠では、夢に反応して体動することを防ぐために、脳からの運動神経をオフにしている。ところがノンレム睡眠ではオンの状態だからむしろ頻繁に寝返りをする。この時に寝具のせいで目覚めてしまうのはもったいないのだ。
周波数帯域の区切りが編集者に正しく伝わっているか不安だったので、既にスタジオ収録も終わったであろう3月1日になっても補足資料として以下の画像を提出した。
そうして3月5日(日)のオンエアに至ったのである。
番組では「2分で入眠する」ことを快眠判定基準の一つにしていたが、もちろん普段はこんなに短い入眠潜時を目指す必要はない。こんなに早く寝落ちしたら、「お疲れなのですね」と評するのが普通である。
むしろ入眠潜時のアルファモードを大切に生かして欲しい。それを私がレクチャーしたセミナー動画を弊社サイトに掲載している。
https://selsyne.com/aim/audiovisual/contents/0085.mp4#t=603
オンエアはされなかったが、今回の実験で嬉しい副産物もあった。
それは、ヘッドスパを受けている最中のアルファ波が綺麗に測定できたことだ。春日さんがヘッドスパの施術者に心地よく身をゆだねていることが伺えた。
施術者が被験者に触れるとアーチファクトが混入してしまい綺麗な脳波が測れないものだが、その改善方法の可能性を感じさせてくれた。
そろそろ本稿を終えるが、執筆中には現在自由脳波研究中のジャズ音楽をBGMに掛けていた。とても良い気分だ。
次回はこのフルートジャズ音楽の脳波研究を紹介したいと思っている。
感謝!
一口に“脳波測定”と言ってもその目的は様々だ。
癲癇(てんかん)や不眠症の診断あるいは脳死判定で利用される医療行為もあれば、人の脳を機械やコンピューターと繋ぐブレイン・マシン・インターフェース(BMI)もある。
医療資格を持たない者が医療診断をしてはならないことは当然だが、BMIに携わる場合も高い技術と見識が求められる。
私が脳波測定をするようになった切っ掛けはバイオ・フィードバック訓練で、かれこれ35年になる。その呼び方は脳波フィードバックやサイコ・フィードバック、近頃はニューロフィードバックともいう。
フィードは注ぐ、バックは返す、すなわち五感では分からない脳波を機械に注いで、人に分かる音や表示にして返してくる。
俗に、アルファ波の状態が良いと言われるが、その状態になろうとしても成れない。今どんな脳波が出ているのか分からないからだ。
しかし、バイオフィードバック訓練をすることによって、自身の今の脳波が分かるから、徐々にそれをコントロールできるようになるのである。
ただし、「言うは易く行うは難し」である。私自身、バイオフィードバック訓練者としては未熟であると自己評価せざるを得ない。
愚直に取り組んできた脳波測定だが、石の上にも三年、その十倍を越える年月で蓄積したノウハウを認めて頂き、今では大学や企業、マスコミ等から脳波の測定/解析でオファーを受けるようになった。
大雑把に言えば、五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)への試料の作用が脳コンディションをどう変えるのか、その前後の脳波測定及び解析評価である。
快眠グッズや睡眠の評価を目的にする脳波測定の依頼も増えていて、医師の傍らで脳波測定器をオペレーティングすることもある。
もちろんバイオフィードバックを目的とした脳波測定も続けている。ただし、より成果を出すために、サポーティング・バイオフィードバック法という造語で取り組んでいる。
自律訓練法や催眠誘導、ヨーガ、エネルギーワークなどの確立したあるいは確立しつつあるメソッドの習得をバイオフィードバック法を補助輪のように沿える自己統御訓練である。
サポーティング・バイオフィードバック法を確立するために、様々な達人の門を叩いてきた。また、気律脳波の達人「ザ・マスター」の検定試験も立ち上げ、チャレンジャーの脳波測定をしてきた。
ここで改めて申し上げるが、医療的脳波測定は国家資格を有する医師や医療検査技師でなければならない。
ただしそれは、医師や技師に対して簡易脳波測定士が劣るということではない。簡易脳波測定士は、分を知って究める科学者であるべきだ。
“簡易脳波測定士”という名称を初めて聞く読者も多いだろう。これは、簡易脳波測定器のメーカー(フューテックエレクトロニクス株式会社)担当者と私が本プロジェクトを立ち上げるにあたって考えたものだ。
プロジェクトとは、簡易脳波測定士を養成する「“簡易脳波測定士”になる徹底的に基礎講座」のことで、昨年末にパイロット企画として「ドクターズセラピストのための簡易脳波測定器を用いた評価方法と実際の脳波測定例」をリモート開催して以来、ウェブページを少しずつ更新してきた。
この一年間ある組織の理事長職を突然に仰せ付かったために傾注できなかったが、やっと再開できる。
そのウェブページが「簡易脳波測定士への道」である。
私は、「脳波測定/脳コン解析サービス」を立ち上げてこの分野を開拓してきたが、その開拓力がまだまだ不足している。
基準を満たした質、そして大量の脳波測定データが欲しい。
そのために、同志になってくれる簡易脳波測定士を脳波測定器メーカーと共に養成することにした。
暗黙知のままのノウハウも、できるだけ形式知に顕在化させながら授業に生かしていきたいと思っている。
まずは、「“簡易脳波測定士”になる徹底的に基礎講座」の入門セミナーをリモート(Zoom)で10月1日(土)20時~22時に開催し、その後も、第3水曜日と第1土曜日の同じ時間帯に継続開催する予定だ。
この2時間のセミナーは、1年前のパイロット開催の前から、脳波測定/脳コン解析サービスのオプションレクチャーとして顧客に提供してきたもので、脳波のいろはを分かり易く且つ楽しく学習できるようにまとめている。
入門セミナー修了者には、脳波測定コースと脳波解析コース、そしてビジネスコースを用意する。また、修了者の更なる研鑽の場所として交流研修会も開催する予定である。
本当なら大勢に集まって頂いて講座を開催したいのだが、現実には叶わないだろう。当面は、生で準オンデマンドという形も用意したいと思っている。すなわち、お一人の都合にも合わせて入門セミナーを開催し、3つの本コースも少人数になるだろう。
そうやって開催実績と成果を積み上げつつ、プロモーションに長けた人や組織とのご縁を待ちたいと思っている。
脳波測定/脳コン解析サービスもそうやって地道に続けて来て花が咲いた。これを始めたときのように、今もワクワクしている。きっと素敵なご縁があると信じている。
時代のニーズに応える簡易脳波測定士のプロになるべく、その道を歩み始める同志に巡り会えることが楽しみだ。
弊社の「脳波測定/脳コン解析サービス」には様々な目的のクライアントからオファーを頂くが、最も多い目的の一つが“睡眠の見える化”である。
寝具や睡眠サプリメント、寝室環境、BGMなど、その評価対象は枚挙に遑が無い。
終夜睡眠脳波を測定したデータから“見える化”する睡眠指標は幾つもある。
例えば、就寝してリラックスできていればα(アルファ)モードとなる。すなわちα波が優勢な状態だ。そのα波が途切れたら入眠である。その後、δ(デルタ)波が優勢となれば睡眠が深くなったことを示し、さらに強くなれば熟睡したと判定できる。
このスペクトル折れ線グラフの緑がα波だ。約10分間αモードが続いたことが分かる。その後入眠し、深い睡眠に移行すると赤紫で示すδ波が強くなっていることが分かる。
しかし、この熟睡(δ睡眠、徐波睡眠)は10分も続かなかった。何らかの睡眠阻害刺激がδセービングを破ったのだ。これをδブロッキングという。
このようなδブロッキングを起こす睡眠阻害刺激を一つひとつ潰していくことが、上質な睡眠に誘うノウハウとなる。
この分布グラフは、就寝後の約61分で生じたδブロッキングを捉えたものだ。睡眠阻害刺激で約1分間睡眠が浅くなった後にまた徐々にδ波が強く、すなわち睡眠が深くなり始めていることが分かる。
深い睡眠が破れてもすぐに深い睡眠に、すなわち強いδ波を取り戻すノウハウの構築も必要だ。δモードを守り、もしも破られてもすぐに取り戻す、これらの働きをδセービング機能と呼ぶ。
さて、次のグラフに話しを進めよう。この棒グラフは、深い睡眠時間帯の平均値(各定常波の電位)を表示したものである。手前のカラー(5色)がδセービング機能下で眠ったときで、奥のグレーはδセービング機能をオフにして同じ被験者が眠ったときの脳波だ。
δセービング機能をオンにして眠った方が深い睡眠を示すδ波が強い。逆にα波はδセービング機能オフの方が強くなっている。すなわち深い睡眠中でもうっすらと覚醒しているときもあったということだ。
α2波の中心付近ではδセービング機能オンの方が若干強い。これは、睡眠阻害刺激が発生した際にその刺激を脳自身が打ち消して(キャンセリングして)眠りを維持させた証である。
グラフ上では分かり難いが、β波は1から2に渡って全てδセービング機能オフの方が若干強くなっている。特にβ2波では瘤のように2箇所で強くなっている。熟睡中でも不快感があったと分かる。
脳波解析PCソフト「Analyzer+」の解析機能で、以上のグラフのように睡眠状態を直観的に把握することが出来る。
さらに、例えば「δセービング機能を開発する」というような目的がある場合は、脳波測定結果を定量的に把握することがより効果的である。
この数値表は、「Analyzer+」で解析した脳波データをExcelに入力したものである。
その上で、熟睡状態の脳波バランスや入眠に要した時間など様々な指標を元に課題を定量的に把握する。
脳波を正確に測定する、そして測定結果を目的に応じて適切に分析して定量化する。その一連の作業が脳波解析する者の腕の見せ所なのである。
このブラフは、「快眠熟睡度」を定量化して比較したものである。
課題を具体的な数値でグラフ化すると、クライアントの目的達成は格段に早まるのである。
弊社「脳波測定/脳コン解析サービス」は、クライアントの真摯な取り組みをしっかりとサポートし、後押しするものである。是非!
私は、「脳波測定/脳コン解析サービス」をご注文頂いて、大学や企業、そしてテレビ番組の脳波測定実験に参上する。
そんな中で比較的多い脳波測定実験が終夜睡眠脳波である。すなわち、被験者が眠っている時の脳波を一晩中測定しながら観察するのだ。
5時間~8時間ほどジーッと観察し続けるのは大変そうに思うかもしれないが、私はこの測定が全く苦にならない。被験者の就寝状態を映すモニターと、脳波を表示するモニターを並行的に観察する。脳波が型通りの推移を見せることもあれば、特異な様相を見せることもある。
脳波測定の分野では、「α(アルファ)ブロッキング」という言葉が使われる。
脳波測定の基本は、被験者が“閉眼安静”になって測る形だ。被験者が閉眼安静になるとα波の優勢が続く。これを「脳のαモード」と呼ぶ。ところが、例えば被験者が目を開けるとそのαモードが途切れる。これがαブロッキングである。
睡眠時の脳波測定をする場合、被験者の眠りが深くなるに連れてδ(デルタ)波のパワー(電位)が増してくる。順調にいくといわゆる90分サイクル(90分と言っても実際には数十分程度の幅がある)に入る。
ところが、δモード(徐波睡眠)に移った途端にそのδ波が途切れることがある。原因は幾つかあるが、例えば被験者自身のイビキである。
睡眠が深くなり始めて筋肉が弛緩し、気管を塞いでしまうからだ。
イビキはまだいい、息が続いているので、δモードを維持できることもある。ところが、睡眠時無呼吸症候群に陥ってしまうとそうはいかない。ほぼ確実にδモードは途切れてしまう。これを、αブロッキングに倣ってδブロッキングと私は呼んでいる。
先週、福岡の会社からご用命頂いて、ある寝具の快眠効果を検証するために2夜に渡って終夜睡眠脳波を測定した。この時、被験者があることに邪魔されて、頻繁にδブロッキングが生じる事態があった。それを観察する中で、新たなネーミングが閃いたので記しておきたい。
近年、様々な方面で快眠サポートの実証実験が行われている。枕やマットレス、抱き枕、香り、BGM、空調、バイブレーション、自律訓練法、催眠、サプリメント、入眠導入剤など様々である。
それらは正に、δモードを守るための試みだ。
δモードを“守る”だから、「δラッピング」或いは「δセービング」、「δディフェンド」、「δガード」、「δプロテクト」等々。
δモードを守り維持する方法や技術、効果、機能、グッズなどによって呼び方が変わってきそうだ。
これから、「δセービング効果」や「δセービング機能」「δセーバー」等というネーミングで解説し訴求していこうと思った。
その一例が、本号のタイトル「この“δセービング機能”が、あなたの熟睡を包み込む」である。
そんなことにも思いを馳せたりしていると、終夜睡眠脳波の観察はあっという間に時間が過ぎていく。
YouTubeを利用して公開してきた「映像配信局」の動画を、セルシネのサイト内でもご視聴いただけるようにした。
2007年に携帯電話で撮影した動画を公開して以来、自己実現/能力開発関連の動画をコツコツと作成し、現在83本(限定公開/非公開含む)をアップロードしている。
チャンネル登録者は1,008名、総視聴回数1,103,164 回だ。
14年目のチャンネルにしては地味ーな展開ではあるが、セルシネのコンテンツを紹介する場としてとても重宝している。
日常を撮影した短い動画はツイッター も利用している。
そんな折りに思い立った。動画をセルシネのサイト内で完結させようか?
一昨日から作業を始め、YouTubeで公開している全動画をセルシネのサイト内でご視聴いただけるようにした。
なんか、シンプルでいい。
YouTubeの喧噪から離れて、静かに集中できる感じだ。
「映像配信局」 是非!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
https://selsyne.com/aim/
拙著「宣言 アファーメーション・バイブル ~言霊の生かし方~」紹介ページに、動画「情報循環モデルの中の理性的自我の役割を知る」を掲載したので、本ブログには、その原稿と画像を記しておきたい。
こんにちは。セルシネ・エイム研究所の和田知浩です。
この動画では、「情報循環モデル」の中の「理性的自我」の役割についてお話しします。
前回は、「感性的自我」の働きを中心にお話ししました。
「出来事」の情報が「感受」され、「表象」「生理」「認識」「感情」「言動」と展開しながら、「現状」を作っていくステップでした。
今回は、「理性的自我」です。
「理性的自我」は、「感性的自我」の「感受」から「言動」までを、そして、「出来事」や「現状」をつぶさに巡察します。
その上で、「感性的自我」を的確に統御します。
「理性的自我」のステップも、「感性的自我」と同じように6つあります。
「離れて」「観て」「感じて」「考えて」「決めて」「遣る」です。それでは、ステップ毎にざっくりとみていきましょう。
まず、「離れる」は、何かを切っ掛けに自己改善が必要だと気づいたときです。
例えば、勉強や仕事、趣味などに集中維持が出来なくなった場合、或いは、前回の動画で紹介した、カウンセラーがカフェで噂話を聞いたときや、クライアントから久しぶりにセッションの予約が入ったとき、そして実際に面談したときの、それぞれ嫌な感覚を感じたときです。
こういった嫌な感覚に気づいたときには、既にもう一人の自分、すなわち「理性的自我」が「感性的自我」から離れ掛けています。人生が上手くいかない人の多くは、この中途半端な「離観」のままで、何かおかしい何かおかしいと、ぼんやり酔生夢死のように生きて、そして死んでいきます。
何かの歯車が狂って、自己改善が必要なときには、「理性的自我」が「感性的自我」からしっかりと離れなければいけません。
何かおかしいと気づいたときに離れる方法は、例えば、手首にはめた輪ゴムをパチンとやる、或いは、「離観!」と声に出して、両手で両ほほを叩くなど、様々な方法があります。
もちろん、痛覚を利用しない方法もあります。自分に合った遣り方を見つけてください。
しっかりと離れたら、次にやることは「観る」です。「感性的自我」の「感受」「表象」「生理」「認識」「感情」「言動」をつぶさに巡察する、これを「内観」と言います。そして、「出来事」や「現状」をつぶさに観察する、これを「外観」と言います。
自分の悪い、役に立たなくなった言動パターンが発動しているのを、同時に観察していることもできます。アンガーマネジメントの初動としても効果的です。
次は「感じる」です。「感性的自我」の様子をありのままにしっかりと豊かに感じて、情操を養います。
私達は、自己防衛反応によって、失体感症や失情感症に陥っている場合があります。自己防衛本能を変えようとする努力は不要ですが、自己防衛反応は、必要ならば積極的に変えていって良いものです。
ただし、「離れて」、「観て」、「感じて」という一連の巡察では、「感性的自我」や他人を、或いは「出来事」をジャッジすることは不要です。ただただ、ありのままを「観て」、そして「感じ」ます。
次は「考える」です。ここからはしっかりとジャッジを下していきます。ただし、柔軟性は保ったままです。
ともすれば、「再生的思考」にとどまって、何度も同じ失敗を繰り返しているかもしれません。「再生的思考」を止めて、「生産的思考」で閃きを得ます。
その際は、例えば、次のようなことをチェックします。
過剰に失敗を恐れていないか?
必要以上の完璧さを求めていないか?
どこかに無理が生じていないか?
役に立たない拘り(こだわり)や蟠り(わだかまり)がないか? などです。
この思考の前提として、次のような考え方も有益です。
「失敗したとしても、その後の対処次第で自身の真価を示すことが出来る」
「嫌いなことや失敗を避けようとする努力は、“努力逆転の法則”に陥りやすいが、好きなことや成功した結果のイメージを背景に、今此処に集中して努力すると“努力順転の法則”を生きることが出来る。この法則を体現するためにどうするか」 などです。
また、他者や環境との整合性を見極める“エコロジー・チェック”や、倫理や道徳に心を配る“エシカル・チェック”なども重要です。
次は「決める」です。決断して、結果を覚悟することと言ってもいいでしょう。
前のステップの「考え」の決着であると共に、次のステップの「遣る」の結果を先取りした決着でもあります。「考え」と「遣る」をしっかりと繋げて実現を約束することです。
本にも紹介した通り、私が会社勤めで中間管理職に就いていたときに実践していたアファーメーション、「私は責任を持って決断し実行します。」は、この、「考えて」「決めて」「遣る」、の一連を宣言していたわけです。
「私は責任を持って決断し実行しています。」と、現在進行形で宣言するのも良いでしょう。
そして最後は「遣る」です。「天使のように大胆に、悪魔のように繊細に」「感性的自我」を統御して現実化します。
「離れて」「観て」「感じて」「考えて」「決めて」まで、全てに接続助詞の「て」をつけている理由は、6ステップの一連を切れ目なく続けて行い、最後の「遣る」、で仕留めるということを示すためです。
うまくいかなかった事柄の後に、それを思い出しながら、6ステップを時間を掛けて行うことも出来ますが、うまくいっていない最中に、6ステップを行い改善することも出来ます。
ただし、最中に行うためには、ワーキングメモリーの活性化が欠かせません。
ワーキングメモリーとは単なる記憶ではなくて、この様な6ステップをリアルタイムに働かせる機能も含みます。
ワーキングメモリーを活性化させる「抗ストループ訓練」や、「速話聴取法」、そして、ワーキングメモリー能力を判定する様々な動画を、セルシネのYouTubeチャンネルに用意していますので、是非ご利用ください。
前回の動画で解説した「感性的自我」が『水平の6ステップ』であり、今回の「理性的自我」が『垂直の6ステップ』です。
この情報循環モデルの自己統御法を「T型12ステップ法」と呼びます。
何かが上手くいかないとき、例えば、目標達成や能力開発がなかなか進まないとき、或いは人間関係でつまずいたとき、そういったときに、自分のどこに注目して自己改善すれば良いのか、そして、自分の何を生かせば良いのか、そんな視点のお話しを、二本の動画に渡ってしてきました。
いかがでしょうか? 詳しい内容と遣り方は、この本、「宣言 アファーメーション・バイブル ~言霊の生かし方~」に書いていますので、参考にしてください。
また、パーソナルサポートやセミナーのプログラムも用意しておりますので、是非ご利用ください。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
https://selsyne.com/aim/
拙著「宣言 アファーメーション・バイブル ~言霊の生かし方~」紹介ページ
に、動画「目標達成や人間関係がうまくいかない時の自己改善法を『情報循環モデル』の視点で考える」を掲載したので、本ブログには、その原稿と画像を記しておきたい。
こんにちは。セルシネ・エイム研究所の和田知浩です。
この動画では、何かが上手くいかないとき、例えば、目標達成や能力開発がなかなか進まないとき、或いは人間関係でつまずいたとき、そういったときに、自分のどこに注目して自己改善すれば良いのか、その視点をお話しします。
こんなシチュエーションを想像してみてください。
ここはカフェです。あるカウンセラーがカウンターに座って軽食を摂っていました。すると、そのカフェへ、3,4人の客が入ってきて、後ろの少し離れたボックス席に案内されたようです。
カウンセラーが、その人達の会話を聞くとはなしに聞いていると、何やら自分のことを話しているようでした。
「あのカウンセラー、どう?」
「ダメ~! 私に合わないわ・・・」
そして一週間後、その人だと思っていたクライアントがカウンセラーの元に来て言いました。
「また調子が悪くなって・・・」
そのときカウンセラーは何を思い、どんな話しをするでしょうか? 表情は? 態度はどうでしょうか?
さて、同じカウンセラーがこんな体験をしたらどうでしょう。
カウンターに座って軽食を摂っていると、3,4人の客が入ってきて、後ろの少し離れたボックス席に案内されたようです。
カウンセラーが、その人達の会話を聞くとはなしに聞いていると、何やら自分のことを話しているようでした。
「あのカウンセラー、どう?」
「いいわよ~! 私に合ってる・・・」
そして一週間後、その人だと思っていたクライアントがカウンセラーの元に来て言いました。
「また調子が悪くなって・・・」
そのときカウンセラーは何を思い、どんな話しをするでしょうか? 表情は? 態度はどうでしょうか?
同じカウンセラーが同じクライアントから同じ相談を受けても、恐らくカウンセラーが提供するアドバイスは違うのではないでしょうか。そして、それによってクライアントの反応も変わってきます。
もしも同じ様にアドバイスをしたとすれば、そのカウンセラーはいい意味で、よほどの鈍感か、記憶力が乏しいか、天真爛漫か、自制心の達人か、或いは最上級の人格者かもしれません。
セミナーでこの質問をすると、前者と後者のカウンセラーのアドバイスの違いについて、様々な角度からの意見が出ます。
一般的には、前者はクライアントに対して反感を抱いたり、自信を無くしていて、今回の相談は良い結果が得られないかもしれません。或いは逆に、開き直って肩の力が抜け、結果的に適切なアドバイスをするかもしれません。
一方、後者は、クライアントに対して好感を抱いていて、今回の相談にも積極的に、適切なアドバイスができるかもしれませし、逆に、変なプレッシャーを感じて、不調に終わってしまうかもしれません。
パーソナル・マインド・フィルターは百人百様ですから、カウンセラーの反応や思考をここで特定することはできません。
この動画では、ここを掘り下げることはしませんが、とにかく、事前の思い込みの違いによって、その後、同じことを体験しても、多くの人はアクションとリアクションが違ってくる、ということにして、話しを進めたいと思います。
様々な職場で、同じようなことが起こっています。職場に限らず、人が集まる人間関係の場で、或いは自分一人しかいない無人島でも、私達は思い込みのフィルターを通して体験し、そして反応しています。
それでは、自己改善するにあたって、理解するべき「情報循環モデル」について、ざっくりと見ていきましょう。
これが、「情報循環モデル」です。
「出来事」の情報が「本人」を通って、「現状」に出ています。それが「環境」となって、再び「出来事」を作って、そして「本人」に再び入ります。これが繰り返されます。
「現状」というのは、「本人」のアクションに大きく影響されます。そして、「出来事」に対する本人のリアクションによっても作られます。
もちろん「現状」や「環境」、「出来事」は、他人やその他からの影響も沢山受けます。しかし、「本人」周辺は、「本人」が発したアクションとリアクションに強く影響され続けます。
もしも今、あなたがこういう状態ならば、小難しいことをわざわざ考える必要はありません。今のまま人生をエンジョイしてください。そして、果敢に何かに挑戦することもあるでしょう。
しかし、もしも・・・
今のあなたがこういう状態ならば、我武者羅に頑張ったり、何かから逃げたり、無駄な喧嘩をしたり、或いは諦めたりする前に、自身の中の狂った歯車を適切に改善すると良いでしょう。
このレベルで気づくことが大切です。狂った歯車のまま、我武者羅に頑張ったり試行錯誤していると、益々悪循環に陥ってしまうからです。
そうなると、心の専門家にお世話になったり、回復までに長い年月が必要になってしまいます。
「心構え」というのは、物事に対処するための心の準備、予め備えられた“型”のようなものです。また、「心構え」というのは、本人の体験によって作られたもので、ほぼ無意識的に機能しています。
「自身の中の狂った歯車を適切に改善する」というのは、この「心構え」を改善するということです。それでは、「心構え」の働きを、ステップ毎に分けて見ていきましょう。
ステップは6つあります。
現状に作用するアクシ ョンとリアクションとは何か? それは、「言動」です。
この「言動」のベクトルを決めるもの、すなわち言動の方向性と強さを決めるのは、「感情」です。
そして、その「感情」を作るのは、「認識」です。「思い込み」と言ってもいいでしょう。
先ほどのカウンセラーも、カフェでの他人の会話が自分のことを話題にしていると「思い込んだ」わけです。「認識」というのは、実際の出来事によって作られるのではなくて、本人が思い込んだことで作られます。
それでは「認識」は何によって作られるのか? それは、「生理」現象です。「生理」現象によって、「認識」度の強弱が決まったりします。
例えば、「吊り橋効果」や、「笑うから楽しいのか、楽しいから笑うのか」などの考察は、この辺りを検討しているわけです。
先ほどの例で実際に起こったことは、クライアントが来訪して、「また調子が悪くなって・・・」と言ったことだけです。
しかし、カウンセラーにあった事前の「心構え」の違いによって、クライアントの言葉に「生理」が反応し、前者はこうなり、
後者はこうなったかもしれません。
カフェでの体験によってできたカウンセラーの「心構え」は、そのクライアントから久しぶりにセッションの申込みがあった段階でも、既に何らかの「生理」現象が起動するようになっていたかもしれません。
それでは、「生理」は何によって作られるのか? それは、「表象」です。入力されてきた個々の刺激を、ひとまとまりの形に再構成した心の印象です。
そしてもう一つ、「生理」を作るルートがあります。それは、食物や酸素の摂取です。「心構え」を作る上で、このルートも大変重要です。
それでは、「表象」の元となるものは何か? それは、「感受」です。
感覚器官で受け取った刺激の影響は、「感受」では快/不快/中性という風にシンプルですが、感覚記憶の働きによって、この段階で既に、有りの儘の情報が少しだけ変容しています。
こういったルートを情報が縦横無尽に内循環、或いは超内循環して「心構え」を作っています。感覚記憶の影響を受ける「感受」を含めて、各ステップは記憶から影響を受けますから、普通は、このステップ順を固定的に考える必要はありません。
「心構え」は出来事に反応して、「現状」という結果を作ります。そして、その結果は記憶され、「心構え」を更に変容していきます。
私達の「心構え」は、沢山の情報入力に曝されています。
例えば、上司や同僚、部下、業者、顧客、ご近所、PTA、サークル、クラスメート、家族、マスコミなどからです。
特に、権威者や好きな人からの情報は、無防備に循環し、強化されます。
例えば、 “ピグマリオン効果”(被期待効果) 、“プラシーボ効果”(偽薬効果)、“ハロー効果”(後光効果) 、“ホーソン効果”(被注目効果)などもあります。
この情報循環を、自身の手でしっかりとマネジメントすることが重要です。
現状を変えるには、感受から言動までのどこかに、楔を打ち込む必要があります。
自己改善するための心理学は沢山ありますが、それらは全て、このステップのどこかに、何らかのアプローチをする訳です。
情報が内循環する経路は2つあります。“内感経路”と“外感経路”です。
内感経路は、記憶を想起したり、想像を巡らしているときの内的入口です。
外感経路は、出来事など、現実世界に意識を向けているときの外的入口です。
賢く生きるために、或いは素早く言動するために、記憶力や想像力はとても重要です。しかし、時として自分を苦しめる元凶となっていることもあります。
長く尾を引く“間違った心構え”は、この内感経路から影響を受けています。
この様なときは、内感から離れて、極力「表象」や「感受」の外感経路に意識を留め置くことが、“今此処”のフレッシュな世界を享受するコツです。
ここまでお話ししてきた、ほぼ無意識の「心構え」を、「感性的自我」といいます。
最初にお話しした通り、この「感性的自我」のままで人生をエンジョイできているのならば、素晴らしいです。理想の在り方です。
しかし、「心構え」の歯車が狂っているならば、「感性的自我」から、もう一人の自分が一旦離れて、自己改善しなければなりません。その、もう一人の自分のことを、「理性的自我」と言います。
先ほどのカウンセラーの例では、そもそもカフェで噂話を耳にしていたとき、自身の「表象」や外側の「出来事」を、「理性的自我」が点検することで、勘違いを避けることができたかもしれません。
「理性的自我」は、「感性的自我」の様子をしっかりと観察しながら、必要ならば、必要な箇所に楔を打ち込んで、自己改善します。
「感性的自我」の働きは、「慣性の法則」に似ています。すなわち、「物体が外力を受けないとき、その物体の運動は一定を保ち続ける」、という法則です。
共鳴現象によって、本人の「心構え」に類似の「出来事」が誘発されやすいので、その外力によって、「感性的自我」は益々スパイラル的に、その「心構え」を強化します。
或いは、「感性的自我」の在り方に全く関係ない、不可抗力によって突き落とされることもあります。
この様に、何らかの理由で「感性的自我」の歯車が狂ったときには、「理性的自我」が外力の役割を担って、しっかりと「感性的自我」を改善します。
ただし、この様に2つの自我があるとき、すなわち「観察される自我」と「観察する自我」があるときは、最も素晴らしい、最高の状態であるとは言えません。何かに没頭し、人生を最高にエンジョイしているときは、「“理感一体”である」、ということも、覚えておいてください。
以上が、「情報循環モデル」の概要です。詳しい内容と実践方法は、この本「宣言 アファーメーション・バイブル ~言霊の生かし方~」に書いていますので参考にしてください。
また、パーソナルサポートやセミナーのプログラムも用意しておりますので、是非ご利用ください。
以上が、昨日アップした動画「目標達成や人間関係がうまくいかない時の自己改善法を『情報循環モデル』の視点で考える」の原稿と画像である。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
https://selsyne.com/aim/
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